週刊新藤第248号 役割を終える民主党・野田政権!〜一刻も早い解散・総選挙を求める理由〜

法案成立率は戦後最悪の31%。国会審議もまともにできず、党内を統治できない政権に国家を統治できる訳がありません。民主党・野田内閣は役割を終えているのです。国の建て直しのために、今こそ政治の出直しが必要です。


◆ 民主党の分裂で国会は機能不全

  6 月15日、自民・公明・民主各党は「社会保障と税一体改革関連法案」について合意し、私たち自民党が求めた修正を行い、国会の会期末である21日までに法案を採決・可決させる約束をしました。
その後の民主党の約束破りや、小沢一郎元代表と鳩山由紀夫元首相らによる大量造反と、分裂・離党騒ぎはみなさまご承知のとおりです。
あまりの混乱振りに国会も世間も麻痺状態となり、首相のリーダーシップ不在も政党間の約束が平然と破られることも、国会が空転していることも大した問題になりません。
党首が約束したことに党内が従わず、大量の造反・離党を出す事態は、もはや民主党が統治能力を失っている証です。
選挙公約(マニフェスト)に反する政策を実施する法案を成立させることは、国民が寄せた期待と信頼に対する重大な裏切りとなります。
民主党・野田首相は、政権の基盤が消滅した状態で、これから一体何をしようというのでしょうか?


◆ 社会保障と税一体改革の合意とは?

 自民党が修正を求め 3 党が合意した「社会保障と税一体改革」法案の中味をご報告します。
少子高齢化が大きく進むわが国において持続可能な社会保障制度を確立すると共に、世界各国が経済財政危機に直面する中で日本が財政再建と経済成長の両立による再生を果たすことは、国内はもとより国際的にも極めて重要な責任です。


◆ 社会保障制度の基本的考え方

○自助・共助・公助の適切なバランスに留意し、自立を家族の助け合いなどで支援していく。
○税金や社会保険料を納付する者の立場に立って負担の増大を抑制しつつ持続可能な制度とする。
○社会保障給付の公費負担費用は消費税収を主要な財源とする。
○年金、医療保険、介護保険制度は「社会保険制度を基本」とする。
○少子化対策は、単に子育て支援にとどまらず、就労、出産、育児等、各段階に応じた支援を広く行う。
○総合こども園は創設せず、現行の認定こども園を拡充する。
○生活保護制度を見直し、不正受給への厳格な対処、生活扶助、医療費扶助等の給付水準適正化、就労の促進など、自助を基本とする。

□三党合意・社会保障に関する確認書


◆ 民主党マニフェストは事実上の撤回

 民主党のマニフェストに基づく、税方式の最低保障年金制度の創設や、後期高齢者医療制度の廃止法案を国会に提出する方針は白紙となり、事実上の撤回となりました。
年金や医療制度の改革は法案成立後に設置される「社会保障改革国民会議」の議論を経て法制上の措置を講じることになったのです。


◆ 消費税の税率と、引き上げ時期

 私たちがこれまで主張してきたとおり、消費税率を 5 %引き上げ10%とすることとし、時期として、2014年 4 月に 8 %、2015年10月に10%とすることにしました。

□三党合意を踏まえた消費税関連法案の修正内容


◆ 経済状況への配慮

 消費税の引き上げは経済状況を勘案することとし、自民党の主張により法案の景気条項に「成長戦略や事前防災、減災等に資する分野に資金を重点的に配分し、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する」ことを盛り込みました。

□三党合意・税関系協議結果


◆ 低所得者・中小企業事業者への配慮

 「簡素な給付措置」を自民党の提案により 8 %引き上げ段階から実施するとともに、「複数税率」と「給付付き税額控除」を並列で検討することとしました。
中小企業事業者にとって適正な消費税の転嫁を行えることが重要であることから、政府案にはなかった「円滑かつ適正な転嫁を可能とする立法措置」を盛り込みました。


◆ 3党合意法案は「プログラム法」

 今回の 3 党合意法案は、これから実施しなければならない「社会保障と税の一体改革」について、その決定する手順と準備、実施時期を定めたプログラム法なのです。
1.法案が成立すると、まず「社会保障改革国民会議」が設置され、一年かけて(=2013年 8 月頃までに)あるべき年金や医療制度が議論され、内容が決まります。
2.それを受けて必要な財源が明確になり、充当すべき税制の改正範囲や規模が明らかになります。
3.国民の税負担を引き上げるには、経済状況の好転見込みが立たなければならず、そのための景気対策を政府は前もって実施します。
4.こうした手順を踏んだのちに、政府は税率引き上げ時期の半年前(=2013年10月頃)を目途に,経済状況等を勘案し、総合的な最終判断を行うことになっているのです。


◆ 税率引き上げの判断は新政権が

 私がかねてより申し上げております「衆議院を解散し、新たに国民の信を得た政党と議員による政権を作るべきだ」という理由の最大ポイントがここにあります。
現在の私たち衆議院議員の任期は2013年の 8 月までなのです。
任期切れが確定している政権と議員が社会保障の新しい制度を決めてしまって良いのでしょうか?
ましてや与党として統治能力を失っている政党と、その代表が首相を務める政権が、国民との約束を反故にした状態のまま、財政負担を伴う新たな経済対策や、新たな社会保障制度という国家の重大政策を決めて良い訳がありません。
来年秋の消費税引き上げの政府最終判断を、現・野田政権が行うことは絶対にあり得ないのです。
従って、今回の消費税関連法案を成立させた段階で、現在の野田政権と私たち衆議院議員は一旦役割を終わらせるべきと私は考えます。


◆ 法案が成立でも、不成立でも解散

 民主党・野田政権は、 3 党合意に則って消費税関連法案を参議院で可決・成立させたならば、「マニフェストに反しても、やるべきことをやりきった」のだから、自分の政権が決定した結果について国民に信を問わなければなりません。
仮に、参議院審議で小沢新党や鳩山グループの活動により 3 党合意が破られ法案が修正もしくは不成立となれば、自民党はそうした無責任政権相手の国会審議を行える訳がなく、迷いなく不信任案を突きつけることになります。
野田政権は、消費税法案を成立させても、させられなくても、衆議院を解散せざるを得ないのです。


◆ 統治能力を喪失した戦後最悪の政権

 会期を無理矢理に延長した国会では、 6 月26日に衆議院本会議を開催以降、 3 週間にわたって国会がまともに開かれておりません。
今(第180)国会では内閣提出の法案が新規と前国会からの継続法案併せて、105本出されていますが、成立は現状わずか33本です。
法案成立率31.4%は過去最悪の鳩山内閣の54.5%をさらに下回り、日本国政府は機能不全を超え機能停止状態と言わざるを得ません。

□第180国会・閣法提出数・成立数・成立率

しかも民主党の造反・分裂劇は、今後さらに激化する見通しです。
原発再稼働問題や米軍のオスプレイ導入問題などへの政権の稚拙な取り組みは、目を覆うばかりです。
この日本政府の弱体・脆弱化につけ込むように、ロシア・韓国・中国は外交姿勢を強め、日本は政権交代以降のわずか 2 年半で国益を大きく損なってしまいました。
政府最大の責務は予算執行ですが、財源の特例公債法案は審議入りすらできていません。そのような政権に、新たな財源を伴う補正予算編成を委ねられる訳がありません。
今こそ野田首相は、自らが発言した「捨て石になる」時だと思います。国政の最高責任者として「滅私報国」の行動を期待します。


新 藤 義 孝