週刊新藤第247号 日本海メタンハイドレートの調査航海に同行しました!〜新海洋資源の可能性〜


◆ 国会議員初となる、日本海メタンハイドレート調査航海に同行

6 月 7 ・ 8 日、独立総合研究所が実施した日本海のメタンハイドレート調査航海に同行しました。
代表の青山繁晴さん、夫人の青山千春博士(水産学)に、ある会場でお会いした際、突然お誘いを受けました。日本海にあるメタンハイドレートに関しては、話は聞いているものの国会議員で実際に現場を確認した者はこれまで一人も居りません。
私は千載一遇のチャンスとばかりスケジュールを調整し、調査船に乗り込んだのです。

○海洋資源大国を目指して!「日本海メタンハイドレート調査航海」(2012.6.7~8)


◆ メタンハイドレートは、氷の塊

 メタンハイドレート(以下、メタハイ)とは、メタンガスと水が結びついて氷状になった状態のことです。冷温下で圧縮された塊は、溶けると170倍の体積のメタンガスになり、私達が使用している天然ガスと同じ活用が出来ます。
メタハイは地層プレートの境界面や地震がよく起きる場所に存在し、世界中に分布していますが、陸・海共に商業化された例はありません。
日本はこの分野で世界の先頭を走っており、2001年よりカナダで陸の地層から産出する試験を成功させ、本年 3 月には愛知県の渥美半島沖南海トラフで世界初となる海洋産出試験に成功しています。
私は試験後に静岡県清水港に戻った資源探査船「ちきゅう」に乗り込み、メタハイの現物を確認しています。(週刊新藤242号「海は資源の宝庫」をご覧ください。)

○参考:日本海の特徴


◆ 太平洋側「分子状」のメタハイ

 日本近海には判明しているだけでも約100年分のメタハイがあると言われています。
その多くは太平洋側にあり、水深2500m付近の海底下200〜300mの砂層にメタハイが「分子状」で砂と混じって存在しています。
取り出しは、砂層にドリルパイプを打ち込み圧力をかけて砂もろともメタンガスを吸い上げる「減圧法」で行います。
技術的に難易度が高く、コストをどう抑えるかが課題ですが、我が国は10年以内に世界初の商業化を目指し、開発を強化促進中です。


◆ 日本海側「結晶体」の新メタハイ

 これに対して 6 〜 7 年前に新しいタイプのメタハイが日本海側で発見されたのです。
水深1000m付近の海底下50〜100mの泥の中に「結晶体」として氷の塊となったメタハイが確認されました。場所によっては海底に露出した状態のものもあります。
さらに、日本海側ではメタハイの「プルーム」と呼ばれる氷の小片が泡のように海中に立ち昇る状態が確認されています。このプルームの下には必ずメタハイがあるのです。

○海底に露出しているメタンハイドレート
○科学魚探システム


◆ 3種の音波装置でプルームを捕捉

 今回の調査地点は、新潟県直江津港から約32km、水深1000㍍付近の海底です。
6 月 7 日の深夜、船に乗り込み、早朝 5 時に出港、わずか 3 時間ほどで海域に到達しました。
調査手法は、「マルチビーム音響測深装置」「科学魚探システム」「サブボトムプロファイラー」という 3種類の音波測定装置を活用し、27時間連続で海底および海中のメタハイとプルームを測定しました。
青山千春博士の指示のもと機器調整を済ませ、特定した調査地点を船艇から音波を発出しながら調査船はゆっくり進みます。
私達は船内の会議室に中継されるプロジェクターで調査データを見守ります。
やがて探知機の表示画面に柱のように立ち昇るメタハイのプルーム(泡)を何本も確認することができました。
このプルームは水深約1000mから湧き上がっており、幅130m、高さ600〜750mという大きさです。
日本海の海中に、東京スカイツリーより大きなメタハイのタワーが何本も立ち昇るという、壮大な模様をを初めて目の当たりにし、私はとても感動しました。

○マルチビーム音響測深装置


◆ 「生物分解起源」と「熱分解起源」

 さらに興味深いのは、この 2 タイプのメタハイ起源の違いです。
太平洋にあるメタハイは、太古からの微生物の堆積により生成された「生物分解起源」であり、採取すればやがて無くなる有限のものです。
ところが日本海のメタハイは、地球(マグマ熱の噴出)活動によって生成された「熱分解起源」であることが分かってきており、地球が存在する限り無限に生成される可能性があるといわれています。
今、この瞬間も日本海の海底から何本ものメタンガスの氷の泡が、まるで温泉のかけ流しのように出続けている模様をご想像ください。


◆ 日本海メタハイ生産手法の研究を

 日本の海洋資源開発に新たな希望をもたらす日本海側の新メタハイについては、今回の調査で実在することが確認できたものの、日本周辺にどれほど分布しているのかは、未だに全体調査が行われていません。
さらに埋蔵分布を確認したとしても、このメタハイをどのように採取し資源ガスとして商業活用できるか、産出・生産手法を確立するための調査・研究が必要です。


◆ 既に動き出している周辺諸国

 メタハイは、尖閣から竹島、隠岐島、佐渡島を通り、北方領土に至るまで広く分布しているという説もあります。
2011年 7 月、英国エジンバラで開催された「国際ガスハイドレート学会」で、韓国が竹島の日本側海域で2014年までにメタハイ開発を実用化すると発表した、という情報まであるのです。
6 月16日に中国の調査船が尖閣沖EEZで通報外海洋調査を行い、海上保安庁の巡視船が排除しましたが、一体何の資源調査を行っていたのでしょうか?


◆ 海洋資源と領土問題は密接不可分

 我が国は世界第 6 位の海洋経済面積を主張できますが、尖閣・竹島・北方四島問題の影響で、日本海側の排他的経済水域(EEZ)は境界線がいずれも確定していません。
「資源小国から海洋資源大国へ」、我が国の未来を拓くメタハイなどの資源開発は、周辺国との領土や主権問題を解決しなければ実効性があがらないのです。
また、資源開発なくして新しい経済成長戦略の柱は成り立ちません。
「海洋資源開発」と「領土問題の解決」と「経済成長」は、密接不可分なのです。

○我が国の領海・EEZ概念図


◆ 「資源確保戦略推進法案」を提出

 私は自民党の資源確保戦略PTに参加し、「資源確保戦略推進法案」を党としてまとめ、このほど自民、公明、たちあがれ日本、新党改革、各党が提案する議員立法として国会に提出されました。
この法律案は、海洋資源や都市鉱山など新たな資源戦略を国家として定め、戦略の実施に必要な財政上の措置を取ることとしています。
また、資源の産業化を促し、新たな企業と雇用を産み出すと共に、関連資機材・工具など製造業への需要を起こすことも狙いとしています。


◆ 新潟県沖に大規模油田の可能性が!

 18日、経済産業省は「新潟沖に大規模油田の可能性があり、来春から試掘を開始する」と発表しました。
私が調査に赴いたまさに同じ海域のさらに深い地層に、山手線内の 2倍に相当する面積に石油や天然ガスの埋蔵可能性があり、来年から試掘が始まるのです。
日本の高度な技術を活用し、我が国は新たな資源やエネルギーを自己調達出来るようにする=「ニュー・フロンティアへの挑戦」に私は取り組んでまいります。

○「新潟県沖に大規模油田か、来春にも試掘」読売新聞ネット版(2012年6月18日 15:45)


新 藤 義 孝