週刊新藤第245号 消費税・年金・子育て政策のちがい〜野田政権は、国民に信を問うべき!〜

社会保障と税の一体改革については、消費税・年金・子育てなど各々の政策に根本的・哲学的なちがいがあり、妥協の範囲を超えています。国政の重要事項についていよいよ国民の信を問わなければならない、と私は考えています。


◆ もはや統治能力を失った野田首相

 国会は会期末の 6 月21日まで一ヶ月を切りました。野田首相が「今国会中の成立に政治生命を懸ける」という消費税増税関連法案の審議は始まったばかりであり、採決の見通しはまったく立っておりません。


◆ 「泥沼の二股愛」と記事に書かれ!

 これは先週の新聞記事の大見出しです。自民党に法案成立のために協力を要請しておきながら、一方で自民党が政治責任を追及し断絶を求める小沢元代表とも関係修復のための会談を行う。
誰が見ても無節操な二股交渉をしていながら平然としている様は、もはや「鈍感」を超え「無定見」としか言いようがないのです。
野田政権は、原発の完全停止による電力不安、東北復興の大幅な遅れ、デフレ克服と経済成長戦略の欠如、など国政の重要課題に何一つ有効な策を打つことが出来ないことに責任を感じないのでしょうか?


◆ 日本の国際発信力は低下するばかり

 先々週の日・中・韓サミットでは、中国から尖閣問題を主張され、韓国からは慰安婦問題を持ち出されました。野田首相は相手から言われたことに反応しただけであり、受け身の日本は、またもや主導権を奪われてしまったのです。
先週の主要国(G8 )サミットでは、あらかじめ用意された以外ほとんど発言の機会もなく、他国からも意見を求められず、具体的な財政再建策も示せず、参加した首脳の中でただ一人 2 日間のみの滞在で帰国し、日本の国際発信力低下を印象付けただけで終わってしまいました。


◆ 野田内閣の法案成立率は24%!

  4 月20日の問責決議から 1 ヶ月が経ち、衆院の社会保障と税の一体改革特別委員会を除き、他の委員会の法案審議はまったく行われず、国会はほぼ機能停止に陥っています。
首相は、野党から問責を受けた田中防衛・前田国交両大臣の更迭要求に対し「問責決議は重く受け止めるが、2 閣僚には職責を果たしてほしい」などといい、事態の重要性をまったく受け入れようとしません。
野田内閣は今国会に81本の新規法案を提出していますが、成立はわずか20本!24.6%の成立率です。
通常国会として戦後最低記録である、平成22年鳩山・菅内閣の54.7%を大きく下回る公算です。
自民党政権下では、大体100本程度の法案をだし、90から100%の成立率でした。野党の抵抗や拒否があっても法案を成立させ、国政を進めていくのは内閣の責任なのです。
いまや野田首相と内閣は、内政・外政ともに統治能力を完全に喪失した状態なのです。


◆ 「社会保障と税」自民・民主の違い

 野田内閣が命運を懸けて取り組む「社会保障と税の一体改革」は、そもそも自民党政権時代から進めてきた解決すべき日本の最大課題です。
政局に惑わされず、与野党の垣根を越え知恵を出し合っていくことは当然であり、その前提で自民党政権時代から取り組んで来ました。
であるならば、なぜ合意形成が進まないのでしょうか。
それは自民党と民主党の社会保障と子育て政策に関して、国政運営上の根本的・哲学的なちがいがあり、妥協や協調できる範囲を超えた部分があるからだ、と私は考えています。


◆ 「消費税増税」についての根本的違い

 自民党は消費税の10%引き上げを提案してきました。
しかしそれには前提があり、ムダを削減し必要経費を絞った上で、経済対策により景気を上向かせ、雇用や収入の改善がなされた後に実施する、としてきたのです。
一方、民主党は政権 3 年目にして、仕分けによるムダ削減どころか、国家総予算は政権交代前の207兆円から228兆円に増大し、国債発行が戦後最悪となる中、デフレ脱却も経済成長も出来ないまま、バラマキと呼ばれるマニフェスト施策を続けるために、なりふり構わず消費税増税を強行しようとしています。
そもそも「消費税を含む増税をしない・必要ない」としたマニフェストと、「増税の際には国民に信を問う」とした国民への約束を反故にしながら、責任をとらずに済むわけがありません。
さらに低所得者への逆進性対策として「給付付き税額控除」を打ち出していますが、この制度では所得を申告しなかったり、過小に申告した人が過大に給付を受け取る可能性があります。
「努力した人がばかを見る政策」を私たちは受け入れられないのです。自民党は食料品など生活必需品への「軽減税率」を提案しています。


◆ 「年金制度」についての根本的違い

 民主党の「最低保障年金制度」は、
①保険料をかけずに全額税方式で国民に年金を支給する。
②満額受け取れるのは年収260万円までの低所得者であり、690万円で支給は打ち切り、700万円以上の人は税金を負担するが支給はなし。
(正式な制度設計はなく、民主党内の非公式試算のみ。)
③財源は消費税 7 %相当(民主試算)を追加増税し、国民全体で負担する。
という制度です。
政策の基本に、少子高齢化・人口減少社会の我が国は経済成長が難しいとの前提に加え、「富の再分配」という社会主義思想が根本にあり、私たちは絶対に反対です。
自民党の考え方は、
①社会保障は保険料納付を基本とし、消費税を中心とする公費は限定的な充当とする。
②最低保障年金制度は反対。無年金対策は生活保護見直しで対応。
③自助努力による「がんばった人が報われる社会」を基本に、経済成長の可能性を徹底的に追求する。
ということであり、両党の考え方はまったく違うのです。
他にも、保険料が自己負担のみの自営業者向けの国民年金と、労使折半で保険料負担する被用者年金の一元化は非現実的であり反対です。
しかし会社員の厚生年金と公務員の共済年金の一元化は私たちが提案してきたことであり、同意できます。
年金加入期間の25年から10年への緩和や、受給時期の弾力化などは私たちも提案しており、一致できる点は少なからずあります。


◆ 子どもは家庭か、施設で育てるか

 子育て施策に関する根本も、「自助が前面の自民」と、「公助の民主」ではまったく違います。
民主党政策の基本は「子どもは社会で育てる」です。突き詰めれば、子どもは施設に預け、父親と母親がともに働く社会が基本であり、故に専業主婦の税制上の控除は廃止する、という政策提案になるのです。
民主党提案の幼稚園と保育園を統合した「総合こども園」構想は、待機児童の解消を目指し、全ての子どもを施設に預ける政策です。
これに対して私たち自民党は「子育ては家庭が基本」を軸に、社会的支援を充実するという考え方です。
現在の幼稚園と保育園の足りないところは「認定こども園」で補完し、株式会社の参入は反対します。
また、「幼児教育無償化」制度を創設し、 3 〜 5 歳の教育費を無償化し、若年家庭の負担軽減と子育ての安心のための提案をしています。

○The Jimin NEWS 「自民党の政策(子育て)」『子ども・子育て新システムには反対です』


◆ 無理な妥協を避け、国民の信を問う

 今行われている消費税増税関連法案の審議では、一致できる改善点は決着させればよいと思います。
しかし、国政運営や国民生活上の根幹的なちがいについては、見せかけの安定のために無理な合意を優先させるべきなのでしょうか?
制度設計の基幹部分にこれだけの差異がある以上、社会保障と税の一体改革案については、国民に信を問い、国民の選択を受けるべきだ、と私は考えているのです。


新 藤 義 孝