週刊新藤第243号 「日本海」は国際的に確立した呼称〜韓国「東海」歴史主張には明白な誤りが!〜

私のホームページには、米国などに送付した「韓国・東海主張の誤り」のパネルや資料、記者会見の動画がアップされています。また、月刊「Will」6月号にも拙文が載っておりますので、よろしければご覧下さい。

◆ 「日本海」を「東海」と主張する韓国

「日本海(Japan Sea)」は、1929年(昭和 4 年)から国際水路機関(IHO)によって国際的に定められた唯一の呼称です。
ところが、最近になって韓国が国際社会を巻き込んだ大プロパガンダ活動を行い、「日本海」を「東海」にするべきと主張しています。
米国バージニア州議会では今年の 1 月26日、韓国人団体の陳情を受けた議員により、州の使用教科書に日本海/東海を併記することを求める条例案が提出され、わずか一票差で否決ということがありました。
3 月22日からはバージニア州の韓国人団体がホワイトハウスに対し「米国教科書の東海表記訂正」の電子請願を提出し、署名が 2 万 5 千人を超えるた場合、米政府はこれに回答をするルールなのですが、署名者数は10万人に達しています。


◆ 韓国「東海」主張のポイント

韓国が「日本海」を「東海」に改めるべきとする主張は、
① 2 千年前、キリスト生誕以前から「東海」呼称が使われてきた。
②「日本海」呼称は日本の拡張主義、植民地支配の結果広められた。
という二点に集約されます。


◆ 韓国主張には、明白な歴史的誤りが

ところが私が自民党・領土特命委員会でこの問題の第一人者である拓殖大学の下條正男国際学部教授から歴史根拠を確認したところ、韓国の「東海」主張には、明白な歴史的誤りがあることが判明しました。


◆ 2000年前の「東海」は渤海のこと

韓国は「東海のほとり」という文字が高句麗の建国(紀元前37年)を記述した『三国史記』(1145年成立)にあると主張しています。
しかし、高句麗の建国の地は鴨緑江上流、中国の遼東半島の付け根であり、日本海と接していません。
遼東半島は、渤海と黄海の間に突き出ており、ここでいう東海は中国から見た東の海=渤海のことです。


◆ 碑文の「東海」は墓守の居住地

次の根拠は、「広開土(コウカイド)王碑(414年)」に見える「東海賈(コ)」の三文字です。
ところがこの意味は、王様の墓を維持するための墓守が居住する地域の名称であり、海の名前を記したものではありません。


◆ 500年前地図の「東海」は祠の位置

さらに、『新増東国輿地勝覧(1530年)』の「八道総図」に、「東海」の文字があることで、500年前から使用していた根拠としました。
しかしその文字は陸地に記され、意味は東海の神様をまつった祠(ホコラ)の位置を示したものなのです。
『新増東国輿地勝覧』は、明代の『大明一統志』の編集方針を踏襲しており、そこでは外海を「東、大海に至る」と明記しています。
韓国が東海を日本海全域に拡大しようとするのは、大西洋をアメリカの東海岸と改称すべきだ、と同じことになってしまいます。


◆ 愛国歌の「東海」は沿海のこと

1907年に作詞され1948年から韓国の国歌となった「愛国歌」では、「東海が乾き果て、白頭山がすり減るまで韓国は永遠」と謳われます。
しかし、1915年に刊行された『韓国痛史』では、「韓国は亜細亜東南の突き出しに在る半島国なり。その境界は東、滄(ソウ)海に沿い、日本海をへだてて、西は黄海に臨んで中国に対す」と記されています。
韓国の沿海の外には日本海が拡がっていると認識されているのです。


◆ 19世紀初頭、欧米で「日本海」が確立

また、韓国は日本に併合されていた1929年、IHO総会で日本の拡張主義によって東海を日本海に奪われたのだと主張しています。
でも、歴史事実は全く違います。「日本海」は欧米各国が慣習的に使用していた呼称を国際機関が追認したものであり、日本政府が要請したものではありません。
18世紀までの欧米の地図では日本海の他、様々な名称が使用されていましたが、日本政府が行った古地図調査によって、19世紀初頭以降、日本海の名称が他を圧倒して使われるようになった事実が明らかになっています。
19世紀に作成された古地図におけるこの海域の名称の使用比率について、米議会図書館や、大英博物館及びケンブリッジ大学、フランス国立図書館や国立博物館などの調査では、いずれも「日本海」が85〜95%、「朝鮮海」が 3 〜15%、その他の呼称も少しありましたが、「東海」表記は 0 %でした。


◆ 鎖国中の江戸時代、日本は関与せず

「日本海」の呼称は19世紀初頭までに欧米各国によって確立されたのです。この時期、日本は鎖国中の江戸時代であり、日本は国際社会と交わることすらしていないのです。


◆ 韓国の調査では3つの呼称を1つに

韓国も古地図調査を行っていますが、日本の調査と比較して厳密性にも網羅性にも欠けるものです。
日本はフランス国立博物館で、1495枚の古地図を調査しましたが、韓国は同博物館で、約三分の一である515枚しか調査していません。
あきれたことに韓国側の調査では「東洋海(ORIENTAL SEA)」「朝鮮海(KOREA SEA)」を「東海(EAST SEA)」と同一にカウントし、その合計数と日本海が使われている地図の合計数とを比較しています。
朝鮮半島東側の海=東海を、どうすれば西洋から見た東洋の海=東洋海と同じに出来るのでしょう。


◆ 竹島が日本の海に在ってはいけない

これほど明白な誤りにも関わらず、韓国が臆面もなく国際社会に訴える動機は何なのでしょうか?
それは竹島問題だといわれています。「韓国の島である竹島が日本の海に在ってはいけない」。
そのため最近になって急に韓国は無理な主張を始めているのです。


◆ 資料を米国・IHO加盟国に送付

折しも 4 月23日から27日まで 5 年に一度のIHO総会がモナコで開催されます。韓国はこの誤った歴史認識を、恥じるどころか国際社会に大々的に訴え、日本海を東海に代え、併記すべきと提案しているのです。
私はこうした韓国主張の誤りと「日本海」呼称が確立した経緯を、広く国際社会に伝え主張する必要があると判断し、「日本海呼称問題に関する一考察(A Study of the Naming Issue of Japan Sea)」を作成することにしました。
資料は英文にしなければ各国に訴えられません。研究者やスタッフ等の徹夜の協力を得ながら、必死の作業で何とか作りました。
4 月19日、自民党本部で国内マスコミに記者会見し、米国大使館を訪ね米国公使に直接説明しました。
また、モナコのIHO事務局と加盟する76ヶ国の大使館宛に電子メールを送り、資料を郵送しました。
船舶の安全航行のために海の呼称を定めた国際ルールは、歴史事実、法と正義に基づいて確立されるべきです。
国際的に確立された唯一の呼称「日本海」がねじ曲げられることのないよう活動を続けてまいります。


新 藤 義 孝