週刊新藤第220号 菅政権で国難を克服できるのか?~日本立て直しのため、あえて訴えます~

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 統一地方選挙では自民党候補者に対し、たくさんのご支援をいただき本当にありがとうございました。
 頂戴いたしました多くの得票により、私たち自民党は有権者に対し重い責任を請け負ったと考えております。皆さまの期待に応え、日本の立て直しに向け国・県・市の議員が力を合わせて頑張ってまいります。


◆ 混乱と不手際が続く菅政権

 東日本大震災から 1 ヶ月半が経ちました。未だに13万人に上る方々が不便な避難所暮らしを強いられ、早期の被災者生活支援や被災地の復旧・復興が求められています。
 私たち自民党は、大震災発生後、政府にできる限りの協力をし、それまで掲げていた政権打倒の主張を強く自制してきました。
 しかし、これまでの政権の対応は、菅首相がリーダーシップを発揮することもなく、原発事故への不透明な後手後手の対応を始め、失政を繰り返すばかりです。
 政権の内部からですら、今のままではこの危機に対処できないとの声が上がる始末です。統一地方選挙における民主党の惨敗は、震災対策と復興を菅政権に任せることはできないとの国民の意思の表れではないでしょうか。
 私達国会の現場から見ても、国民の眼から見ても、もう菅政権は限界を超えていると思います。我々は従来の姿勢を大きく変えるべき時に来ていると云わざるを得ません。
 菅政権では復興は望めないと考える大きな理由をあげます。


◆ ①会議の乱立による指揮系統の混乱

 現政権は震災関連の「本部」や「会議」を立て続けに設置し、傘下のチームも含めるとその数は20を越え、組織の乱立による指揮系統の混乱を招いています。出席者から何のための会議なのか解らないという声も出る始末であり、菅首相の指導力不足が際立つばかりとなっています。

 

○東日本大震災で政府・与党が設置した主な本部など

 

緊急災害対策本部        

被災者生活支援特別対策本部

被災者生活支援各府省連絡会議  

ボランティア連携室

原子力災害対策本部       

福島原子力発電所事故対策統合本部

原子力被災者生活支援チーム   

経済被害対応本部

各党・政府震災対策合同会議   

電力需給緊急対策本部

復興構想会議              

(復興構想会議傘下)検討部会

日米合同調整会議        

原子力災害現地対策本部    

原子力損害賠償紛争審査会   

(緊急災害対策本部傘下)現地対策本部

中央防災会議(既存)

 

<今後設置予定>

復興本部(仮称)        

原発事故賠償チーム

 

<民主党>

復旧・復興検討委員会      

応急仮設住宅建設促進チーム

電力需給問題検討チーム    

原発事故影響対策プロジェクトチーム

復旧・復興特別立法検討チーム  

 

など

 


◆ ②震災関連立法の成立、未だなし

 1995年の阪神・淡路大震災の時には、最終的に成立した震災復興関連法16本のうち、3 本が 1 ヶ月以内に、8 本が約40日で成立しました。しかし今回は、この原稿を書いている時点で1本も成立しておりません。被災地の復旧・復興は、必要予算の前提となる法律がなければ動きません。


◆ ③情報発信の不手際による海外からの不信

 放射能汚染水の海洋放出情報の伝達が近隣諸国に遅れたことや、事故状況の正確な公表がなされなかったことで、現在の日本政府の能力に国際社会が大きな疑念を持つことになっています。
 海外からの不信は、日本の食品・製品の輸入規制等への過剰な反応につながってしまいました。


◆ ④首相の言動の軽率さ

 震災対応にあたる菅首相の言動の軽さは見るに堪えません。地震発生の翌日に首相は官邸からヘリで被災地に視察に出かけましたが、これにより東電の作業に遅れが出た恐れが指摘されています。
 また原発に関して「最悪の場合、東日本がつぶれることも」「原発周辺地域には20年、30年住めない」と発言し、地元から涙とともに怒りの抗議を受けることになってしまいました。


◆ 見るに見かねて委員会を開催

 私も、今回の我が国が経験したことのない原発事故に対し、政府の不手際を攻め、批判していれば良いなどとは毛頭考えておりません。まずは現場で被爆の危険を顧みず必死に作業されている方々のためにも、自民党も政府に協力を申し出、事故対応作業を見守ってきました。
 しかし、現状は明るい兆しが見えるどころか、政府の対処方針が正しい選択なのかもよく分からない状態です。
 4 月27日、私が委員長を務める衆議院・決算行政監視委員会では、政務 3 役ではない政府側実務者と原子力専門家を交えて、原発問題に関する集中審議を行います。
 これは、未だに事故収束への道筋を見せることが出来ない政府に対し、国会での議論を少しでも役に立ててほしいとの思いから、見るに見かねて委員長の私から各党に呼びかけ開催したものなのです。


◆ 危機の時こそ確たる政権を

 国難とも言うべき現状にあって、党利党略により国政の混乱を引き起こすことは厳に慎むべきです。
 しかし、就任する際も、就任してからも一度も民意を問うたことがなく、指導力に疑問がある首相の下で、この国難を乗り越え、新たな日本の再生が出来るのでしょうか?
 菅首相からは谷垣・自民党総裁に対して、震災、復興対策の仕事を引き受けて欲しい旨の話が持ちかけられました。首相こそが取り組むべき仕事を野党に頼むのであれば、むしろ政権そのものを引き渡すべきと思います。
 私は、現状の菅政権下での連立政権には賛成出来ません。
 当事者能力を欠いた弱体政権との大連立指導力なきオール与党体制混乱の拡大無責任体制となってしまうのです。
 今我が国の政治に必要な体制は、有能な指導者と挙国一致体制ではないでしょうか?
 今行うべきは、指導者の交代と政権の補強であり、それを可能とするのは、衆議院の解散総選挙しかありません。
 危機的な状況だから菅政権を変えるべきではないというのではなく、危機的だからこそ菅政権を変えるべきとの認識に立つべき、と敢えて皆様にお訴えします。


◆ 新しい国造りに、勇気を持って邁進

 もちろん現状で直ちに解散総選挙という訳にはいきません。
 まず、被災地の復旧を最優先にし、自民党は、一次補正予算による被災地の復旧事業については全面協力します。
 所属議員全員が参加し作成した、東北地方復興のための基本法を国会に提出し、実現を図ります。
 第二次補正予算の編成やその実行体制についても具体的な計画を出します。東北地方をモデルに、新しい日本の国土造りを提案することになります。
 そもそも、がれきの撤去や仮設住宅の建設や生活再建のための一次補正予算 4 兆円の執行には、最低数ヶ月が見込まれます。
 その間に、国会全体で新しい国家運営体制の構築が出来ないか、私も志を同じくする同志と共に、必死で様々な可能性を模索しております。
 まずは被災者の方々の復旧事業に全力を注ぎ、困っている人々を救うための仕事を行いつつ、新しい日本に向けた希望を打ち立てることが政治の責任です。
 新しい日本造りは、明確なビジョンと強いリーダーシップにより、我が国の総力を結集出来る体制で行われなくては達成できません。
 かつて我が国は、あの敗戦の混乱と国土の荒廃の中にあっても、戦争終結から 8 ヶ月後の昭和21年 4 月に国政選挙が行われ、そこから新たな国作りが模索されました。
 これまで幾多の国難を乗り切ってきた日本の歴史を振り返り、勇気を持って邁進してまいります。



 新 藤 義 孝