週刊新藤第217号 「尖閣諸島」と「竹島」に関する決議~領土問題に関る国策変更の提案~

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「尖閣諸島」及び「竹島」に関する自民党・領土委員会の決議、竹島問題への政府質問主意書と答弁尖閣諸島の戦没者慰霊に関する資料などをホームページに載せてありますので是非ご覧になってください。


◆ 尖閣へ1000隻の中国の船が?

 尖閣諸島を巡る中国の活動は、中国人船長の釈放、不起訴にしたことで終わった訳ではありません。
 昨年の漁船衝突事案以降、尖閣諸島の周辺海域では何度も中国の漁業監視船が確認されています。
 しかもそれはヘリコプターが発着可能な最新鋭のもので、海上保安庁の警告に対して「我々は尖閣を合法的に管理している」などと返答しているといいます。
 海が荒れている冬の時期に動きが無いように見えるだけで、尖閣に対する中国側の圧力と活動は確実に増強されているのです。
 今年の 6 月17日は日本と米国との間で沖縄返還協定が調印されてちょうど40年の節目の日となります。
 この日に合わせて、尖閣領有権を主張する中国・台湾等の団体が結成した「世界華人保釣連盟」なる組織が、世界中から1000隻の船を出航させ、尖閣諸島への上陸を目指すというのです。
 これが現実となれば、我が国の主権に対する重大な挑戦行為に他なりません。


◆ 石垣市の上陸要請を政府が拒否

 このような外からの攻勢に対し、日本はどう対抗するのでしょうか。政府の危機感は極めて薄いと云わざるを得ません。昨年10月、尖閣諸島が所属する沖縄県石垣市は政府に対して、固定資産税の課税に必要な実地調査を行うため、尖閣に上陸したいとの要請を行いました。正確な課税額を把握するには現地を見る必要があり、この要請は極めて自然なことです。私が委員長代理を務める自民党領土に関する特命委員会でも、この点を含む尖閣実効支配強化に関する決議を行い、それについて当時の仙谷官房長官に直接申し入れを行っています。
 しかし本年 1 月、政府は上陸を認めないという決定をしました。島の「平穏かつ安定的な維持及び管理」という政府の賃借の目的を勘案して、というのがその理由です。
 確かに自民党政権時代も、同様の理由で国の機関以外の尖閣諸島への上陸は認めてきませんでした。それは東シナ海を「棚上げの海」とする日・中の政治合意があり、両国が特別の動きをしないことが尖閣諸島の平穏をもたらしていたのです。
 しかし、今や状況は完全に変わりました。中国は海軍力を強め、東シナ海の制海権を得るために様々な形で我が国に圧力をかけています。
 民主党政権の対処能力の不備を突いて、尖閣諸島の領有権を主張するだけでなく、強引に実効支配を狙ってくる可能性もあります。
 日中間の政治合意が中国側によって破られた今、我が国はこれまでの方針を続ける訳にはいきません。 歴史的・国際法的に認められた我が国の領土を、無人島として放置しておくのではなく、我が国と国民のために必要とされる用途に利活用していく必要があります。実効支配を強化していくことは現状において当然の判断であり、国策の変更を今こそ決断する時だと思います。


◆ 尖閣への上陸、実地踏査を決議

 以上のような状況を踏まえ、領土特命委員会では、2 月10、16日と二度にわたり議論を行い、尖閣諸島に関する決議を行いました。
① 政府による灯台の改修や気象観測所、ラジオ電波中継所、監視レーダーサイト等の設置を行うなど、島の有人利用化を図ること。
② 政府にそのための早急な実地調査の実施を求める。
③ 国会で委員会議決を行い、国政調査権に基づき施設等の整備のための実地踏査を行う。
 この決議は、政府が何もしない・出来ないのであれば、国会が国政調査権という憲法によって与えられた権利を発動し、国会の委員会視察により尖閣諸島の実地踏査を行うよう、自民党から各政党に呼びかけることを決めたものです。
 私はこの決議を単なるスローガンで終わらせるつもりはありません。
 尖閣諸島がかつてない圧力にさらされている今、我々国会議員は具体的な行動をもって、我が国の領土と主権を守るという覚悟を示さねばならないのです。
 この他、決議には魚釣島での尖閣諸島戦時遭難死没者の慰霊を実現させることも盛り込みました。
 昭和20年 6 月、台湾へ疎開中の石垣町民180人を乗せた船が米軍機の攻撃を受け沈没。緊急避難した魚釣島でも餓死や病死により計80名が犠牲となる事件がありました。
 魚釣島には慰霊碑がありますが、昭和44年以来、島での慰霊祭は行われておりません。遺族の皆様は現地での慰霊祭を熱望しており、このお気持ちには、国会議員としてぜひ応えなければならないと感じます。


◆ 竹島問題と日韓外相会談

 前号でも書きましたが、韓国は、竹島北西 1 キロ海上に計画している海洋科学基地工事の発注事務を開始し、また住民宿泊所の拡張工事を 4月に完成させようとしています。
 私は 2 月16日朝に行われた領土特命委員会で、外務省に同日予定されていた日韓外相会談でこの件について韓国側に抗議するべき、と前原外相に伝えるよう言いました。
 18日の領土特命委員会で外務省は、外相は竹島問題について「我が国政府の立場を述べた」と報告しました。しかし、韓国側からどんな返答があったのか、やりとりは明らかにされず、問題にしている韓国が計画中の工事について、抗議したかどうかも全く不明です。
 政府が公表しないからなのか、竹島問題について石破政調会長と共に私が記者会見しても、これを記事にした報道機関はありません。
 私は国会議員として、この問題を皆様に伝える義務があると思っています。


◆ 政府に竹島を所管する組織を

 領土に関する特命委員会では竹島に関する決議も行いました。
① 韓国が竹島への施設建設計画を進めていることを広く国内外に公表すること。
② 韓国政府に計画を中止するよう強く抗議し、日韓協議の場を設置すること。
③ 政府に竹島を所管する組織を設置すること
を政府に求めています。
 北方領土に関しては「北方対策本部」が内閣府に設置されておりますが、竹島問題を専門に扱う部局は存在していないのです。
 竹島の所管組織を設置するためには、内閣府設置法の改正が必要です。今国会へ議員立法で提案すると共に、自民党の選挙公約にも反映させ、必ず実現させるよう強力に運動してまいります。
 竹島問題も韓国側がここまで強行に出たことは、自民党政権下ではあり得ませんでした。政権交代後わずか一年半の間の誤った外交対応により、ここまで事態が悪化してしまったのです。
 領土問題はこれまでの国策を変更し、能動的に対処する情勢になりました。「我が国の領土と主権を守る」という、国の成立に関わる基本を確立するため、引き続き精一杯活動してまいります。



 新 藤 義 孝