週刊新藤第208号 ウラジオストク・フォーラムに参加~極東ロシア地域との発展可能性~

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ロシア極東と日本の交流会議「ウラジオストク・フォーラム」に参加してきました。会議の概要はHPの動画をご覧ください。会議終了後、「シベリア抑留者の日本人墓地」にお参りしてきました。日本人として、抑留者の方々のご苦労を決して忘れることはできません。


◆ ウラジオストク・フォーラム

 9 月19日?23日、ロシアのウラジオストクに出張し、ロシア沿海州と日本の交流会議「第 1 回ウラジオストク・フォーラム」に学者やジャーナリストと共に参加しました。
 フォーラムの日本側主催団体である安保問題研究会は、北方領土問題の解決を目標に活動している団体で、これまでのサハリン州とのフォーラムに換えて、新たにウラジオストクでの会議を企画しました。


◆ 日露の発展可能性

 ロシアというと「遠い」イメージがありますが、ウラジオストクがある極東・沿海州は、札幌と同緯度で成田から 2 時間で到着します。
 またロシアは世界の中の大国だと思うかもしれません。確かに軍事力についてはその通りですが、その他の指標で日本と比較すると、面積は日:露で 1 対45ですが、人口では 1億 2 千万人の日本と 1 億 4 千万人のロシアとあまり変わりません。
 GDPでは 1 対0.2と日本の 5 分の 1 程度です。日露の貿易額は日米の13分の 1 、日中の19分の 1 、人の往来は日米の26分の 1、日中の29分の 1 です。
 これは日露間の交流が未だに低レベルにあることを示すと共に、交流を拡大する潜在的可能性がとても大きいと言うことを表しています。
 そして日露交流を進める上では、欧州にある遠いモスクワよりも、日本のすぐ隣に位置する極東ロシアが重要になってくるのです。


◆ ウラジオストクの位置づけ

 ウラジオストクは人口約60万人で極東の中心都市です。ソ連時代は不凍港として重用され、1958?91年までは外部の人間の立ち入りが禁止された軍事閉鎖都市でした。
 広大な国土を持つロシアは欧州でありアジアでもあります。2012年にはロシアで初めてのAPECがこの街で開催されることが決まっており、アジア・太平洋地域への窓口としてウラジオストクの存在は極めて重要です。


◆ 北方領土問題は日露関係の妨げ

 日露の交流を拡大していくには、どうしても乗り越えねばならない問題があります。「北方領土」です。
 日本の新聞社の世論調査では、現在の日露関係が「悪い」と見ているのは69.2%であり、「北方領土問題が日露関係の妨げになっている」と答えた人は84.7%にものぼります。北方領土がいかに両国関係に負の影響を与えているかが分かります。
 北方領土が解決せずとも、当然両国の交流は進めねばなりません。ですが、これを放置したままでは真の友好関係が築けないのが事実です。
 しかし、残念ながらロシアの一般国民で、こうした日本の想いを正しく認識している人は極めて少ない、と言うことが実情なのです。
 最近のメドベージェフ大統領の北方領土訪問表明など、日ロの交渉はかつて無いほど厳しさが増しています。日本は硬軟かつ多角的なアプローチがさらに必要と考えています。


◆ 成功体験のすすめ

 フォーラムで私は、日露の友好関係を成熟させるには、両国間で成功体験を積み重ねていくことが重要だと発言しました。
 私は外務政務官時代、旧ソ連の退役原潜解体事業「希望の星」プロジェクト(週刊新藤第45号をご覧下さい)に関わり、10年間手つかずだった解体事業の実施に成功しました。これを契機に事業は進み、今年になって極東地域に原子炉を搭載したまま放置されていた61隻の原潜全ての解体が完了しております。
 私はこの交渉を通じロシアのイメージが変わり、ロシア人が好きになりました。日露双方の国民がもっと多くの成功体験を得られれば、それがやがては両国関係をも変える可能性を持つと思うのです。


◆ 真の友情を築くために

 極東地域においてロシアの資源、中国の労働力、そして日本の技術力という 3 要素が結合すれば、アジアにおいて計り知れない力が生まれます。これを実現するためには領土問題を解決し、日露間に真の友情関係を築くことが必要です。
 「民主主義国では国民の声が政治を動かす。それ故に、日本と特に関わりの深い極東の人たちに日本側の主張を理解していただき、モスクワに問題解決へ国民の声をあげてもらうことが非常に有効だ。」フォーラムの場で私はこう述べました。
 日本の隣国ロシアとの発展可能性について、今後も地道に追求していきたいと思います。


 新 藤 義 孝