◆ 概算要求基準はあっさり復活?
2011年度予算の概算要求基準はドタバタの末ようやっと閣議決定しました。昨年の民主党・鳩山政権はマニフェストに掲げた「予算の大胆な組み替えによる歳出削減」のために、概算要求の各省シーリングを撤廃し、これこそが形骸化した自民党政治の象徴といいましたが、結果は膨れ上がった歳出圧力を政治がコントロールできず、予算膨張の原因となりました。今年は政府内で何の議論もないまま、まるで従来からの主張を忘れたかのように廃止したはずの各省シーリングをあっさり復活させ、しかも一律10%削減などというメリハリのない戦略性の極めて乏しいものになってしまっています。
去年の主張は何だったのか、私は「あきれ」を超えて何とも云えない「むなしさ」を感じています。
予算を重点配分するために、公開の席で優劣を競う「政策コンテスト」を行うとのことですが、事業仕分けと同様に政治的パフォーマンスにならないことを祈ります。骨太の議論もなく、大元の枠組みがいい加減なまま表面を取り繕ってみても、結果は始めからわかっていることです。
◆ 景気対策を打てない民主・菅政権
日本経済が未だ本格的な回復軌道に乗れない中、民主党・菅政権の経済運営が全く見えません。
まちの中では工場や倉庫の空きが目立ち、事業縮小の声は聞いても景気の良い話など一つも聞きません。
私たち自民党が政権を取っていれば必ず追加の景気対策を打ち、補正予算を編成するところですが、民主党政権からはいっこうに声が上がりません。
それどころか現在有効とされている景気対策も相次いで終了となる見込みとなっています。
例えば、エコカー補助金制度です。自民党・麻生内閣で基金をつくり、21年 4 月から始め、予算を6300億円投下しましたが新車の販売促進に大きな効果を上げました。
この制度は 9 月末で終了となります。政府の方針を受けて、トヨタは10月より減産するそうです。
エアコンや冷蔵庫などのエコ家電のポイントバック制度にも国の予算が5200億円用意され、消費喚起に使われてきましたが、これも12月末で終了の見込みです。
なぜ政府は追加の景気対策を打たないのでしょうか?私はその理由を、用意すべき財源を調達できないからだと考えています。
そもそも22年度予算の景気対策費はいくらなんでしょうか?
◆ 民主党政権の根本的欠陥
22年度当初予算は戦後最大となる92兆円ですが、本年度予算には、毎年恒常的に使われる行政経費と、その年に重点的に投資されている戦略的経費と、景気対策として投下された臨時的経費とがマゼコゼとなって計上されており、どれがどれなのか見分けがつきません。
ここに民主党政権の根本的欠陥があります。菅政権は財政再建に舵を切り、来年度の国債発行額を今年度の44兆円以下に抑える方針を示しました。ということは、今年度に追加の国債発行を伴う補正予算を組むことは論理上困難になります。
現政府が上限とした年間国債発行額44兆円は、自民党政権が当初予算と補正予算で 2 回に分けて発行したものです。麻生政権の当初予算の国債発行は33兆円でしたが、民主党政権は当初予算の段階で44兆を発行してしまっており、補正予算のための発行余地を自ら放棄してしまっていることになるのです。
予算編成においては、恒常的政策は恒常的財源で、臨時的政策は臨時の財源で、それぞれ賄うのが国家予算編成の大原則です。
しかし民主党政権は、子ども手当など恒常的なマニフェスト政策を特別会計の取り崩しという臨時的な収入で賄い、それでも足りない分に赤字国債を増発しました。
結果として、臨時的政策である景気対策(補正予算)の実施が難しくなっているのです。
経済政策は、短期の景気対策、中・長期の成長戦略、財政健全化策の三つがセットで考えられなければなりません。社会保障や子育て支援の取り扱いは、このような経済政策全体の姿を考慮して検討されなければならないのです。
こうした中長期の戦略ビジョンを確立できないまま場当たり的政策を繰り返す民主党政権の根本的欠陥を国民の前に明らかにし、一刻も早く我が国政府の構造的弱点を解消する必要があります。
◆ 民主党の左翼思想と危険な外交姿勢
経済ばかりでなく外交や安全保障にも根本的な問題があります。
これまで私は国会で、政権交代後における日米同盟の弱体化と竹島問題に代表される近隣諸国との日本の外交姿勢の弱体化を何度も指摘してきました。
その根本には民主党政権が包含している、労働組合や社会主義運動家が唱える左翼思想があります。
菅政権になり、この傾向は一層顕著になりました。仙谷官房長官は最近、日韓の戦後処理について「従来の政府の対応は不十分」であり「改めて決着が必要」と発言しました。日韓の間では1965年の日韓基本条約と請求権協定により戦後補償は完全に決着しています。にも関わらず今更このようなことを言うのは、全く理解できません。
また今年の 8 月29日は日・韓併合100年に当たりますが、政府は首相談話の発表を検討していると報道されています。内容はまだ明らかではありませんが、日本の「最大限の誠意」が盛り込まれる予定といいます。これがもし韓国への新たな「謝罪談話」となるのならば、これを容認することはできません。
日韓は未来志向の友人関係を築くべきであり、いつまでも過去にとらわれた不毛な謝罪外交を続けるべきではないのです。
呆れたことに政府は22年度版防衛白書の閣議了承と公表を先送りしました。理由は「竹島問題」の記述で韓国を刺激しないようにするためだそうです。記述は 4 年前より同じ表現であり、外務省が公表した外交青書にも、「竹島は日本固有の領土」と書かれています。記述を変えるのではなく、公表を 9 月以降にしようとする姿勢は姑息で卑屈なもの以外何者でもありません。
◆ 与野党の枠を超えた国会論議を
参院選後の国会は、新しい展開となります。与野党の攻防は激しくなるでしょう。しかし、今号で述べた政府の国家運営の根本的欠陥の解消は政局以前の国家にかかわる大問題です。
私は問題解決のためには、与野党の枠を超え、心ある国会議員が強い危機感をもって結束して行動すべきと考えており、これからの国会でしっかりと行動してまいります。
新 藤 義 孝 |