第179号 この国の大樹とは 〜経済成長と国民サービス〜


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 この国の大樹を考えるために、街にでて座談会を行っています。
ご要望があればおうかがいします。お申し出をお待ちしております。


 ついに衆議院が解散しました。昨年の秋よりいつかいつかといわれ続け、最善のタイミングを探るはずが、最悪の状態で解散したことは否めない事実です。特に最近の自民党内の総裁選前倒しに関する混乱は、本来の自民党支持者の支持すら失うほどのものでした。
 しかし、解散の日の両院議員懇談会では、自民党は結束し国と国民のくらしのためにがんばろう、ということで大いに盛り上がりました。我々は個々の持てる力を集結し、全力で選挙に臨むことしか、この難局を乗り越える術はありません。
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◆ 麻生総理との電話

 実は解散 3 日前の土曜日、私は思い余って麻生総理に直接電話をかけました。
 一国の総理大臣の携帯に電話をするのは、同じ国会議員といえどもかなりの勇気が要ります。私もよくよく考えた上のことです。私からかけた電話に応答はなく、留守電メッセージは遠慮し、つながらなければ仕方がないとあきらめました。すると夕方、麻生総理から返信があったのです。ところが私は集会で演説中のため電話にでられず、総理は留守電を入れてくれました。
 後で着信と留守電に気付いた私は恐縮しつつかけ直すと「はい、麻生です。」と、いつものあの声でご本人がでてこられました。失礼をお詫びしつつ私が申し上げたことは次のようなことでした。


◆ 私が伝えたこと

 「私は両院議員総会の開催に賛成の署名をしました。私の他にも署名をした多くの仲間の声を伝えます。
 この期に及んで総裁選の前倒しを行う気はなく、麻生下ろしなどというものに加担する気はありません。
 しかし、党内の気持ちを揃えるためには、議員がいいたいことをいえる開かれた場をつくることと、麻生総理は自分の気持ちを飾ることなく皆にさらけ出して欲しい。
 国会議員をその気にさせずして、国民のみなさまに想いが伝わるわけがありません。
 昨年の総裁選で訴えた、[日本の底力:とてつもない日本]の原点に戻り、この国の大いなる可能性を訴えるべきです。」
 麻生総理は、力強い声で「よくわかっている。自分は逃げない。国を良くするためには景気回復と経済成長が基本だ。それを実現するまで一緒にがんばろう。よく電話をくれた。ありがとう。」と答えてくれました。
 そして、総理の強い意向により、党執行部が非公開とした議員懇談会は一転公開となり、各議員の意見に対する麻生総理の涙混じりの応答は自民党が一致結束を誓う場となりました。もちろん私の進言が取り入れられたからではありません。私だけではなく、それはみんなが思っていたことだったのです。
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◆ 国の税金の使い方

 私は今とても心配していることがあります。今度の選挙の争点となっている民主党からの提案について、考えてみましょう。
[基礎年金を全額税方式にきりかえ、すべての国民に支給する。]
=これまで年金の保険料を支払っていない人の分を、今まで支払っている人が負担するということであり、必要な財源は消費税 8 %分になると想定されます。
[消費税は 4 年間さわらない。]
= 5 年後にあげるのでしょうか?
「高速道路を無料にする]
=高速利用者から料金をとらない代わりに、舗装の修繕や夜間照明など道路の維持管理代金を、高速道路を使わない人、車を運転しない人が払った税金も含めて、高速を使う人のために使うということです。
[ガソリンの暫定税率を廃止]
=高速料金の無料化による減収に加え、さらに 2 兆 6 千億円の減収になり、その分は他の税金から回されることになります。

 これらは一例です。子ども手当は子どものいない人、子育てが終わった人からの税金を子育てに使うことですし、農家への所得保障は都市住民が払った税金を農家へ大量投入するということです。
 私は税金を使ってはいけないといっているのではありません。年金・道路・子育てなどすべての行政サービスにはすでに国民の税金が投入され、さらに拡充しようと私たちも提案しています。問題は税金投入のバランスです。自由民主主義の日本社会は受益者負担が原則ではありませんか?
 民主党の提案は利用者の負担を減らす代わりに、関係の薄い人が払った税金も投入して国がサービスを行うという社会主義的政策ではないか、と私は考えています。これは国の根幹に関わる政策変更になり、保守主義を標榜する私は絶対に見逃す訳にはいかないのです。


◆ 国の大樹は「経済」


  戦後の日本は自由民主主義の元で大きな発展を遂げてきました。その原動力は何だったのでしょうか?
 日本を支え拡大させた大樹、それは「経済」です。今、我が国が何より取り組まなければならないことは、一刻も早い景気の立て直しと、その後の景気拡大を可能とする経済成長戦略を打ち立て実行することではありませんか?
 その経済という大樹に実らせる果実が、医療、年金、教育、子育て、まちづくり、といった国民サービス部門の財源となります。
 おいしい果実をたくさん実らせるためには樹木そのものに養分をふんだんに与え、水やりや害虫除去など環境を整える必要があります。それが資源や技術であり、防衛・安全保障です。
 樹木の手入れをせずに、果実の収穫が上がるはずがありません。無理な収穫は樹木を弱らせるだけです。日本という大樹は今大きく傷み、治療が必要です。枝を払ったり形を整える必要に迫られています。寄生虫やゴミも取り除かなければならないでしょう。思い切った対策をとらなければならないことは、みんながわかっています。
 この国の経済という大樹をどう手入れするのか。次回は、そのことを考えてみたいと思います。


 新 藤 義 孝