第141号 対日直接投資の促進 ~海外企業の呼び込みを地域活性化に~



 
急に寒くなって参りました。皆様には風邪などひかぬようご自愛の程お願いします。さて、今号では「対日直接投資の促進」に関して紹介させていただきます。
対日直接投資、なんて言われてもピンとこない方も多いかもしれませんが、日本全体のみならず、私たちが暮らす地域の活性化にも関係する、実は意外に身近で
重要な政策です。


◆ 実は身近な「ガイシ」

 皆さんは「外資系企業」というとどんなイメージを思い浮かべますか?お洒落なイメージ、と言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「ハゲタカ」などをはじめとした、なにか日本にとって悪いイメージをお持ちの方も多いのではないかと思います。
 しかしながら、最近人気の家具のイケアやコーヒーチェーンのスターバックス、カルロス・ゴーンさんが辣腕をふるった日産自動車、古くは家庭用洗剤等でお
なじみのP&Gなど、私たちが日常お世話になっている製品・サービスを生み出している企業も外資系企業です。
 私が調べた所、川口市内にもファロージャパンという測定機器の世界シェア70%を占める米国企業の日本法人がサポートセンターを設立しておりました。
 このように、海外から日本に進出してくる企業は、おカネだけでなく国内になかったユニークなサービスや製品、あるいは経営ノウハウをもたらす面がありま
す。こうした海外企業をもっと日本に呼び込み、経済社会や地域を活性化させようという政策が、「対日直接投資の促進」なのです。


◆ 対日直接投資の現状

 「対日直接投資」とは、海外から企業経営のために我が国に投資されるおカネ、あるいはそうした投資活動のことを指します。そして、対日直接投資を受けて設立または買収された企業のことを、一般に「外資系企業」と呼んでいます。
 財務省の統計によると、海外から日本への直接投資の残高は2006年末で約12.8兆円となっており、日本のGDPの2.5%程度の大きさです。この
GDPで比較した大きさを各国と比べてみると、アメリカ13.5%、イギリス47.8%、ドイツ17.4%、中国11.1%、お隣の韓国でも8%と、どの
国でも日本に比べてはるかに多くの外国資本を受け入れていることが分かります。

 始めに述べたように、外資系企業は様々な優位性をもつことがあるため、海外各国では一般に自国への直接投資は歓迎されています。特にイギリスは金融業を
中心に外国資本を積極的に呼び寄せ、かつて「英国病」といわれた深刻な経済停滞に陥っていたことが信じられないほどの見事な経済成長を遂げています。


◆ 我が国政府の取り組み

 2003年、小泉内閣はこうした直接投資受け入れのメリットに着目し、我が国への海外からの投資進出を更に増やそうと対日直接投資の倍増方針を打ち出し
ました。その結果、現在の投資残高は2001年と比べて約2倍となりました。しかし、これでも諸外国と比べて格段に低いため、政府は2010年までに投資
残高をGDP比で5%までさらに倍増させるべく、昨年まとめられた「対日直接投資加速プログラム」に沿って様々な取り組みを行っています。
 その中で、私が現在副大臣を務めている経済産業省では、地方への投資促進に力をいれています。これは、地方への海外企業の進出が地域の雇用や経済活性化
にもつながることを重視し、地方自治体による海外企業誘致活動をジェトロを通じて支援するものです。ジェトロは海外で年間1000社以上の投資有望企業を
発掘し、日本への招致や企業立ち上げを自治体と協力しながらきめ細かくサポートしています。
 この他にも、海外企業の意見も踏まえた規制・制度の改善や、日本への投資を呼びかける海外での広報など、政府全体として対日直接投資の加速にむけた取り組みを行っています。


◆ 「ヨソ者」は活性化の素

 今、地域活性化が大きな課題となっていますが、こうして直接投資にまつわる実状を見てみれば、地域活性化策のひとつとして海外からの投資を積極的に取り
入れることも検討すべきだと私は考えています。例えば、北海道のニセコでは、オーストラリア人がジェトロの支援を受けて滞在型ホテル経営に投資したことを
きっかけに、海外からのスキー客が急増し、不動産投資も活発になるなど、大きな経済効果創出につながっています。また、大阪ではアメリカの医薬品・医療機
器会社を自治体と地元が熱心に誘致し、約70人の雇用と市内企業の取引拡大などの進出効果が得られた事例もあります。
 川口や鳩ヶ谷の活性化も、私は日頃から「内輪の人間だけで考えていてはダメだ、外部の視点をいれなければ」と訴えています。これは他のいかなる地域で
あってもあるいは日本全体で考えても同じことだと思います。外資系企業の進出を不必要に恐れることなく、海外からの「ヨソ者」を日本に、地域にもっと受け
入れて、経済・社会活性化に一役買ってもらう、そういう考え方が今の我々には必要だと私は考えています。

新 藤 義 孝