第138号 止めてはならないインド洋での補給活動   「テロとの闘い」の継続に向けて



 テロ対策特別措置法に基づく、インド洋での給油活動を継続すべきかどうかが、今国会で最大の焦点となっています。


◆ テロとの闘い

 そもそもテロとの闘いが始まったのは、2001年9月11日ニューヨーク同時多発テロ事件からでした。約3,000人の方が犠牲となり、日本人も24人
亡くなっています。この事件を起こしたアル・カーイダやタリバンを撲滅し、彼らの活動拠点となっているアフガニスタンを平和で安定した国に復興させること
でテロの温床を根絶やしにしようというのが「OEF(不朽の自由作戦)」と名付けられた国際社会のテロに対する闘いです。これまで約6年間40カ国が参加
し、イラク戦争に参加していないフランス、ドイツ、カナダも参加しています。
 私たち日本は、憲法上の制約がある陸上での活動ではなく、テロリストの国外移動、武器・麻薬・資金の流れを阻止する海上阻止活動「OEF-MIO」に参加する国々の艦船への燃料や水を補給することで国際社会の一員としての責任を果たしています。


◆ 自衛隊の活動

 日本は、現在、補給艦と護衛艦を各1隻派遣していますが、インド洋は、暑い日は45度を超え艦の甲板は実に70度以上に達し、甲板上で卵を割ると本当に目玉焼きができてしまうそうです。
 
洋上での補給は、補給艦の真横30~50mの距離を同じ速力、同じ針路で航行する外国の艦船にホースを渡して、数時間にわたり、等距離、同速力を維持しつ
つ併走しながら燃料を供給するといった難しい作業です。インド洋の大波の中、接触すれば大事故になります。また、補給中の艦船は自由な航行ができず最も無
防備になることから、護衛艦と艦載ヘリコプターが周囲を警戒するとともに、万一の隊員の落下事故にも備えなくてはなりません。
 隊員に極度の緊張を強いながら、一度日本を出ると戻るのは半年後という厳しい任務です。こうした任務を黙々としかも確実に遂行している日本の努力に、国際社会は国連安保理決議1776号にて高い評価と謝意を示しています。


◆ 誰のための活動か

私は日本の国際貢献を考える時いつも思い起こすのは、1990年の湾岸戦争の時のことです。日本は多国籍軍などへ約130億ドル(約1兆7,000億円)もの支援を行いましたが、国際社会からは「お金だけ出して何もしない日本」と言われてしまいました。
 今回の6年間の補給活動にかかった経費は約220億円です。更にアフガニスタンへの学校建設や医薬品の供与、道路建設など人道復興支援も約1,380億円実施しています。
 私たちの国の平和は、一国だけ内向きに考えていても達成できない時代であることは皆様にも充分にご理解いただけるものと存じます。
 更に、島国であるわが国は原油の90%を中東地域からの輸入にたよっています。ペルシャ湾を出た日本行きのタンカーの航路がまさにOEF-MIOの監視
海域なのです。仮にテロリストが日本のタンカーへ自爆テロ攻撃や乗っ取りを企てたらどういうことになるか。1隻でも被害が出ればその他の船は危険を恐れ、
日本への石油が止まってしまうことはあり得ない危機ではありません。実際に2004年4月24日には日本郵船の大型タンカー(28万トン「高鈴」)が自爆
テロ攻撃を受け、攻撃は阻止されたものの多国籍軍の兵士2名と湾岸警備隊1名が死亡した事件も起こっています。
 更には、アフガニスタンは復興が遅れており、灌漑の進まない荒れた土地のため農作物の収穫が思うようにいきません。貧しい農村は手っ取り早くお金になる
麻薬の原料となるケシの花の栽培を行い、現在世界中に出回っているアヘンの実に90%近くがアフガンで生産されているとも言われています。
 テロリストはこの麻薬を海上を使って密輸し、得た金で武器を手に入れるルートとしてインド洋が使用されており、この麻薬や武器の密輸取引を阻止するためのOEF-MIOにより、これまで大量の武器・麻薬が押収されています。
 このインド洋の海上阻止活動の重大性とこれに参加し信頼を得ている日本の活動が、国際的にも国内的にも非常に極めて重要であることをぜひ皆様にお訴えしたいと思います。


◆ 国会審議の実情

 現在の国会情勢は新聞、テレビ等でご案内のように、民主党は小沢党首の意向で何があっても反対、協議も行わない、果ては海上阻止活動は憲法違反であると
まで主張しています。一方でアフガンの地上に展開している国際治安支援部隊(ISAF)への参加を提案されています。
 このことについて私は到底納得できません。第一にかつて湾岸戦争の際、お金だけの支援を批判し、ペルシャ湾で機雷除去作業を行うべきと先頭に立って主張
したのは、自民党幹事長時代の小沢党首であり、国際平和構築活動への日本の参加の意義を知らぬはずがありません。次に小沢党首が参加を主張するISAF
は、アフガン国内で現在もタリバンと戦闘中であり、そこに自衛隊を派遣するということは海外で武力の行使を禁止しているわが国憲法に大きく抵触することに
なり極めて非現実的です。国連決議さえあれば何でもできるということでは断じてありません。民主党の皆さんはこのことを承知の上で反対のための反対をして
いるのでは、と私は思います。
 そして、今や国内の政局により、日本の国際貢献活動の実施に影響が出ていることを、世界各国が関心を寄せています。当然テロリストたちも知っているでしょう。ここで日本を対象に何らかの行動を起こせば色々な交渉ができると思うかも知れません。
 国際社会共通の目標であるテロとの闘いを政党間の争いの場に持ち込んではいけないと私は考えています。この週刊新藤が発行されている頃にはいよいよ国会
論戦も加熱していると思います。是非とも皆様には「テロとの闘い」の意義に理解を深めていただき、日本が国際社会の一員として責任を果たせるようご支援を
お願い申し上げます。

新 藤 義 孝

 ・防衛省資料 「テロとの闘い」と自衛隊の活動
 ・防衛省資料 派遣海上支援部隊の活動