第135号 参院選後の政界展望 その2 ~安倍総理は続投すべきか~



◆ 大いなる反省

 
自民党の参院選挙大惨敗を受けた政治の大激震が収まりません。小泉政権による構造改革は、永年の日本の悪習にくさびを打ち、時代遅れとなってしまった仕組
みを壊すことに力点が置かれ、小さな政府、市場原理主義による改革が行われました。私はこの改革を断行しなければ我が国の活力を取り戻すことはできないと
今でも確信しております。しかしこの改革によって生じる格差、強いものはより強くなり弱いものはより弱くなるという問題、言わば改革の光と影についてもっ
と丁寧に慎重な対応が必要だということを今更ながらに痛感しております。
 そして更に踏み込んで言わせていただくと、今の内閣が進めている政策や国政運営のやり方は小泉内閣のなぞりであって、真の意味での安倍政権の独自性が国
民の皆様に理解されておりません。わずか10ヶ月で政権支持率が70%から20%台に急落し、反転の兆しが見えない根本の原因はそこにあると考えていま
す。
 個人的には、前回の衆院選挙後にいわゆる郵政造反組の復党を安易にかつ集団で受け入れてしまったこと、今回の参院選でも公認問題で一部候補者選考に情実
が交じってしまったことが悔やまれてなりません。表で構造改革を叫びながら、裏側でそれに相反する行動をしていては、有権者からお叱りを受けるのも当然で
す。年金不信や政治とカネ等参院選敗退の原因は様々ありますが、私はもっと根深いところにも問題があったと大いに反省しております。


◆ 安倍総理は続投すべきか

 そこで大問題となるのが安倍総理の続投問題です。本来ならば辞任すべきだったと思います。「小沢さんを選ぶか、私を選ぶか」と本人が訴えた結果なのです
から、当然の帰結です。しかし安倍総理は続投することを決意しあえて厳しい選択をしました。政治家の出処進退は自らが行うべきでありその責任も自らが取ら
なければなりません。ましてや一国の総理大臣としての判断は国の命運をかけることになるのです。我々のとる道は2つしかありません。安倍総理を支えるか反
対に回るかです。
 率直に申し上げてかなり悩みましたが、私の結論は「安倍総理の続投を条件付で支持し、自民党の立て直しを図る」です。
 昨年の総裁選では、私はかねてからの持論である新しい国づくりには新しいタイプの自民党総裁が必要だという信念に従って、派閥によらない総裁選挙を行う
べく活動いたしました。若く清新な総理の誕生は国民の皆様から大いなる期待をいただきましたが、その分現状は極めて厳しいものがあります。
 しかしながらここで若い安倍さんを降ろしてしまえば自民党はまたもとの道に戻ってしまいます。挙党一致の名のもとに派閥力学が横行し、年功序列政治が復
活してしまう可能性があります。民主党で今行われている小沢代表の政治は、私から見ると選挙優先・政局中心の旧自民党政治の復活に他なりません。時計の針
を戻してはならないのです。
 安倍総理には、まず自民党政権が反省すべきことを明確にし、今後の国の政策の何を変えて何を変えないか、どんな国づくりを進めていくかをわかりやすく国
民に示さなければなりません。27日に予測される内閣改造と党内人事を行う時に、この説明がきちんと行えるかどうかが私が続投を支える条件です。それがで
きなければ安倍政権だけではなく、私たち自民党が国民から見放されることを覚悟しなければなりません。


◆ 安倍内閣の進むべき道

 私なりに考える安倍内閣の進むべき道。それは今の日本に必要な改革を「勇気」と「やさしさ」を持って揺るがずに実行していく道です。
 「勇気」とは先進国最悪の財政赤字を解消する財政再建の道を堅持することです。参院選大敗を受けて、党内外より予算の増額圧力が強まりますが、苦しくと
も文句が出ても徹底した歳出削減と効率良い予算編成を行わなければなりません。更に官僚が徹底抗戦してくるであろう公務員制度改革を妥協なく実行すること
と、道州制を実現させ国と地方のスリム化を図ることが必要です。
 「やさしさ」とは、改革の痛みを和らげる政策を大胆に行うことです。疲弊した地方をどう救うか、ふるさと納税も寄附税制の拡充によって実現したらよいと
思います。年金の安心を確立するには制度の抜本的改正に今一度取り組まなければなりませんし、医療や福祉など弱い部分にもっと光をあてる政策を実施すべき
です。更に経営改善が進んだ企業は経営的には黒字化しましたが、従業員の給与水準は大企業を除き横這いか下回っている状態です。賃金体系の見直しは経済成
長を実感できるためには必要不可欠だと思います。
 今我が国が行うべき政策の方向性は、一方で予算を削り、一方で予算を増やそうとするとても難しい道です。その為の大前提は経済成長を安定的に持続させる
ことであり、法人税などの税制改正に取り組まなくてはなりません。更にはアジア経済共同体構想や農業や科学技術分野等で新たなる市場創出を図ることが有効
です。それには日本の国際社会におる信頼と信用を高めることが重要であり、防衛・安全保障分野の強化安定、国際協力活動への積極的参加を行うことが大きな
意味を持つ、というふうに全てが繋がっていることがご理解いただけると思います。
 一方今回の参院選で民主党が示した政策は、一つ一つをとれば良いことのように見えます。低所得者や年金保険料を払っていない人にも年金を給付する(=そ
の分を皆さんの税金で補填すると言うことです)、児童手当を拡充して中学校卒業まで1人2万6千円に(現行3歳まで1万円)、農家には生産価格と販売価格
の差額を支払う戸別所得補填制度、大都市を除く高速道路の無料化・・・その立法の精神は自民党と変わりませんが財源について全く根拠がありません。選挙戦
を有利に運ぶために予算全体を考えずに個別に打ち出した政策と言わざるを得ないのです。
 私たち政権党はリップサービスだけでは責任を果たすことができません。参院で過半数割れを起こし第2党に転落した現状は本当に苦しく厳しい状況だと思います。
 しかし苦しいときにどれだけ頑張るかで人間の真価が問われます。私たち自民党国会議員はこの困難な状況にあって日和らずしかし柔軟に謙虚に多くの有権者
の声や民主党を始め野党の声にも耳を傾け、国と国民がより良い方向へ進んでいけるように必死の活動を続けていかなければなりません。今が頑張り時です。皆
様のご支援とご指導を切にお願い申し上げます。

新 藤 義 孝