第130号 地理空間情報活用推進基本法案 (NSDI法案)について



 連休が終わり、皆様もお忙しくご活躍のことと存じます。4月の統一地方選挙では私の多くの仲間が当選を果たすことができました。皆様のご支援に感謝申し上げます。
 その間、週刊新藤をお休みすることになり、愛読いただいている皆様には申し訳ありませんでした。今後も参議院選挙中など公職選挙法に制限される時期を除き引き続き発行して参りますので、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
 さて、現在開会中の通常国会では、重要法案の審議が続き、国会の論戦も激しさを増しております。私たち安倍政権はこの国の戦後体制を見直し、新しい国の
かたちをつくるための骨格づくりを進めております。憲法改正のための国民投票法案や教育再生関連三法等の審議には、私たち議員は「国を変える」という緊張
感を持って臨んでいるのです。
 私も皆様から選出いただいた国会議員という大切なお役を果たすべく、精一杯活動しております。今号では、新たな国づくりに向けて現在私が取組んでいる新しい法案をご紹介させていただきます。


◆ 新たな国家基盤・NSDI法

 
地理空間情報活用推進基本法案(NSDI法案)は、自民党内で推進部会をつくり、私が事務局長として法案作成に力を尽くしてきたものです。5月9日に法案
審議の日程が決まり、11日には内閣委員会で私も法案提出者として答弁に立ち、15日には衆議院本会議で可決する予定です。
 この法案の目的は、これまで別々に行われようとしていた二つの大きな仕事、①電子的な地理情報システム(GIS)と、②衛星測位システム(PNT)を合
体させ、一体的に推進することにより、わが国の地理空間情報のより高度な活用や、行政や民間による新しいサービスの提供を行おうとするものです。(詳しく
は以下の資料をご覧下さい)

  「地理空間情報活用推進基本法案」の概要(PDFファイル)
   同法案が目指す社会のイメージ(PDFファイル)


◆ ①地理情報システム(GIS)とは

 GISとは、デジタル化された地図の上に、例えば防災施設の分布、老朽化木造住宅の分布、一人暮らしの高齢者の分布など様々なデータを重ね合わせて表示できるシステムのことで、視覚的で高度な分析と迅速な判断を可能にするシステムです。
 1995年1月に起きた阪神淡路大震災を契機に、国土の境界から、道路などの社会基盤施設の位置、土地の境界に至る各種図面の基盤となる地理空間情報については、デジタル(電子)化が進んできました。
 しかし、同じ基盤的なデータが各省庁、各自治体、各部局ごとに重複して整備され、しかもそれらが互いに重なり合わないものになっているという問題があります。
 また、これらのデータは、例えば道路の新設や拡幅などに伴い、常に新しい情報に更新され、誰もがこれを活用できるようにしておく必要がありますが、その情報の更新・流通の体制が整備されていないという問題もあります。
 これらを解決するために、各システムの連携・統合の強化を図り、様々な情報の重ね合わせを可能とする、より高精度で新鮮な「共通白地図」をつくり、その共用化を行うものです。


◆ ②衛星測位システム(PNT)とは

 衛星測位とは、複数(少なくとも4個)の衛星から送られてくる位置と時刻の情報を受信して、地上における特定の事物の正確な位置を求めるシステムです。最もポピュラーなのが米国のGPSシステムです。
 わが国では、カーナビに代表されるように、米国のGPSを利用して衛星測位がすでに国民生活や国民経済に深く浸透しており、重要な社会基盤となっています。
 これを補完・補強するのが我が国独自の「準天頂衛星システム」です。この衛星は、日本上空からオーストラリア上空を結ぶ8の字型の軌道を24時間で周回
するもので、ほぼ真上(準天頂)の位置から測位信号を送り続けることになります。これにより、ビルなどの遮蔽物の影響が克服され、測位可能な時間帯が大幅
に増加するとともに測位精度も飛躍的に向上します。


◆ 期待される効果

 この法案の実現により、人や物の位置と時間を正確に測定し、国土基盤地図上で特定・捕捉できることになります。これにより、保護者が登下校時や外出時の
児童の行動を見守る「児童見守りシステム」や、携帯電話から110番、119番電話をかけると通報者の位置を警察や消防が自動的に把握できる緊急通報シス
テム等のサービスや、災害時の自動車通行不能箇所や火災状況の把握など、市民生活の安心・安全度の飛躍的な向上が図られるようになります。
 もちろん、都市計画、道路、電機、ガス等、行政に必要な地図データの共有・一元的整備や、住民・事業者のための電子申請など行政の効率化や高度化が図られることはいうまでもありません。


◆ 夢の実現に向けて

 そして、この施策は世界で初めての試みであり、他国に先駆けてわが国が実用化できるならば、そのビジネスチャンスは国内のみならず世界中へ広がることも期待できます。
 世界的科学誌ネイチャーでは、地理空間情報技術は、ナノテクノロジー及びバイオテクノロジーとともに将来が期待される三大重要科学技術分野のひとつとされているのです。
 本法案は役人による政府提案ではなく、議員立法です。昨年6月に国会に提出されておりましたが、これまでの間、継続審議となっておりました。与野党の国会運営のはざまにあって、審議を始めることができなかったのです。
 今回は、自民・公明・民主各党の問題意識を共有する議員たちが、何とか状況を打開しようと与野党の壁を越えて意見交換し、法案の成立に向けて力を尽くしました。統一選の合間をぬって国会議員による協議が続けられていたのです。
 国家の基盤を整えるという大義に向けて協力体制ができたことも私の喜びとするところです。衆議院を通過しても参議院審議が残っており、法案成立まではもう少し時間がかかりますが、会期末に向けて精力的に作業を続けて参ります。

新 藤 義 孝