第123号 「美しく生きる」


 映画「硫黄島からの手紙」の公開により、硫黄島のことや、私の祖父栗林忠道のことが話題となっています。この度「歴史街道」という月刊誌が硫黄島と栗林忠道のことを特集しました。その中で、漫画家の黒鉄ヒロシさんが素晴らしいエッセイを寄せてくれました。
「硫黄島の骨    黒鉄ヒロシ
 選択の余地のない状況に置かれた時、ヒトとしての真価が問われる。
 硫黄島総指揮官に任命された陸軍中将・栗林忠道はいろんな角度からその問いに答えた。
 言語を獲得した古今東西の人類が、不条理と感じて格闘し続ける生と死の問題に対して、行動で示した。
 答案は様々な書体で綴られる。軍人としては楷書、家庭人としては行書、文人としては草書。まとめてのヒトとしての書体は透明のインクで記されたから、読み取る側の主観によってカタチが決まる。
 今を生きる我々は生者にも学ぶであろうが、質と量の点で死者を向く機会の方が多い。
 栗林を含めて、先人達の説くところは「美しく生きる」の一点に集約されるようだ。
 問題はその基準と査定であるが、美しく生きさえすれば、結果として死も同様の景色に吸い込まれる。その際には、背景としての戦争だの軍人だのは皮として、別れや涙はストーリーの筋肉と昇華して、骨だけが遺る。
 栗林忠道の骨は、美しいと思う」

(PHP研究所「歴史街道」1月号より)

 この「美しく生きる」という言葉に、私は深く感銘を受けました。人間が生きていく上で最も重要な価値観ではないかと感じています。今年の6月、私は仲間
の議員とともに台湾を訪問する機会がありました。陳水扁総統を始め政府要人と意見交換をさせていただきましたが、李登輝前総統と面談した際の会話が印象に
残っています。
 李前総統は、「こ
れからの時代、国家にとって最も必要なことはアイデンティフィケーション(アイデンティティの確立化)だ。変革する世界でそれぞれの国が向かうべき方向を
明確にしなければならない。また、この混乱した価値観の世界の中で、人間は何のために生きるのか、答えを探し続けていくことが重要だ。 Who am
I ? I am the I. この哲学的文章をどう解釈していくべきかをずっと考えている」
と、83歳とは思えない情熱をみなぎらせてお話ししてくれました。
 国や個人のアイデンティティ=自己同一性の確認=の確立こそが人間の永遠のテーマであり、私達はそのために人生に悩み、苦しみ、色々な経験をしながら答えを見つける作業を繰り返しているのだと思います。
「国家の品格」という本がベストセラーになり、新渡戸稲造の書いた「武士道」が根強い人気を得、また「硫黄島の戦い」が注目を浴びているのも、この心が乱れ人々が自分の人生や国の将来に明るい希望が見いだせない時代に、生きる知恵を示してくれているからなのでしょう。
 硫黄島の戦いでは、「人は大切なものを守るためにはどんなに苦しくても頑張ることができる。逃げず、へこたれず、踏みとどまることが人間の価値となる」ということが示されました。
 現代の我々は、先人達の労苦と努力を決して風化させてはなりません。戦争という極限の状態で日本人が苦しみ、不安と戦いながら、かくも美しく生きたことに敬意を払い、自分たちの道標としたいものです。


◆ 川口市民の皆様へ ~ 乳幼児医療費の窓口払いが廃止に

 
私は本市における乳幼児医療費の窓口払いの廃止を訴えてきました。週刊新藤44号で取り上げましたが、川口市の場合、6歳までの子どもの医療費は埼玉県と
市で負担しており、実質無料化されています。しかし現在の制度は、利用者が医療機関の窓口で一旦支払いを行い、後日申請書を提出して払い戻しを受けるとい
う手間がかかっています。この手続きのわずらわしさに不満の声が上がっており、しかも東京都やさいたま市ではすでに窓口払いは撤廃されているのです。
 この事業主体は市であることから、私は制度の改善について、仲間である自民党川口市議団に協力を求め、来春の統一地方選挙に向けた自民党川口支部のマニフェスト「KAWAGUCHI 改革プログラム」にも取り上げております。
 この度の川口市議会12月定例会において、自民党 岩澤勝徳議員、公明党 大関修克議員が質問を行い、市として来年4月診療分より、市内の医療機関での窓口払いを廃止する方向で準備している旨の答弁を引き出しました。乳幼児医療費(6歳まで)、ひとり親家庭等医療費、重度心身障害者医療費について、現金の支払いがなく診療が受けられるようになり、保護者の経済的・精神的負担が大幅に軽減されるのではと大いに期待しています。
 この制度改善に私が取り組むきっかけは、小さな子どもを持つある若いお母さんからの訴えでした。物事には必ず始めの一歩、最初の一声があります。今回は
一人の母親の意見が、議員を通じて議会や行政に届けられ、まち全体のルール改正に繋がる結果をもたらしました。政治をやらせていただいて本当に嬉しさを感
じる出来事です。これからも暮らしの改善に向け、始めの一歩を踏み出せるよう努力して参ります。

新 藤 義 孝