第121号 平成19年度税制改正に向けて ~活力に満ちた日本経済をつくるために~



 
今年もまた税制論議の季節がやってきました。グローバル化が進み企業が国を選ぶ時代にあって、あらゆる経済活動にとって、より魅力ある税制を構築すること
は国家的な課題です。また活力に満ちた日本経済をつくるためには、我が国の全企業数の99.7%、付加価値額(製造業)の5割、従業者数では7割以上を占
めている全国430万の中小企業が元気になることが不可欠です。
 中小企業の街、川口・鳩ヶ谷選出の議員として、私は自民党税調の企業税制プロジェクトチームの一員としてこれまでも活動してきました。
 平成19年度税制改正では、①減価償却制度の抜本的見直し、②法人実効税率、③事業承継税制の見直し、④留保金課税の撤廃の4点が大きな焦点になります。


◆ ①減価償却制度の抜本的見直し

 グローバル化・少子高齢化する日本の経済社会の中でも力強く成長していくために、国際的なイコールフッティングを確保し、イノベーションを加速化してい
く必要があります。そのため、昭和39年以来見直されていない時代遅れの制度を見直し、特に技術進歩が著しい分野で設備投資の促進に資する減価償却制度の
抜本的見直しをするべきです。
 日本の減価償却制度には、取得価額の100%償却ができないという問題、そして、償却にかかる年数が外国に比べ長い設備が多いという問題があります。日
本では、法定耐用年数が経過した時点で90%しか償却ができません。諸外国は、耐用年数が経過したところで100%償却ができるという制度になっているの
に対し、日本はその後何年経過しても最大でも95%までしか償却できません。これはもともと昭和39年に行った調査で、設備を使い終わって、それを売った
らどれぐらいの価値があるかを調べた時に、大体平均で売れば5%ぐらいの価値が残るということで決められたようですが、最近の調査では、ほとんど価値がな
く、むしろ廃棄費用のほうが沢山かかってしまうという現状があります。これでは日本の企業の設備更新にとって大きなハンディキャップになってしまっている
と言わざるを得ません。中小企業も技術の短サイクル化や設備のハイテク化に対応していかないと生き残れなくなっています。減価償却制度をこうした状況に合
わせて見直すことが、ものづくり中小企業の発展のためにも不可欠です。
 なお、見直しを行っても減価償却費の総額は同じであるから、中長期的には法人税は減税になりません。
 この減価償却制度の抜本的見直しは、小泉内閣の抜本改革で残された課題であり、何としても解決しなければなりません。


◆ ②法人実効税率の引き下げ

 現在の法人実効税率の国際比較を見ると、日本、アメリカ、ドイツが大体40%ぐらいで、その他の国は大体30%ぐらいになりつつあります。また、GDP
の負担率で見ても、日本は先進国の中では一番重くなっているというのが現状です。先般、ドイツでは、税率の低い中東欧に企業が流出したことに危機感を持
ち、30%弱に引き下げるという連立与党合意がなされました。
 現在の日本企業は、高い税率の中でまじめに税金を納めていますが、今後このような状況が本当に続いていくかどうか。最近5年間でさらに競争相手国の税率が下がっており、国際競争の中でイコールフッティングを確保していかなければ日本は生き残れないでしょう。


◆ ③事業承継税制の見直し

 株式会社になっている中小企業では基本的には承継するものは自社株しかありません。特に高収益の中小企業の株式は高く評価される傾向にあり、欧米に比し
て軽減措置も十分でないことから、親族内で事業を承継する場合に大きな障害になっています。自社株を保有している間は課税を猶予する、いわゆる農地並みの
事業承継税制を確立するべきです。
 この提案は、私が幹事長を務める鋳物産業振興議員連盟が口火を切ったもので、不肖私のオリジナルアイデアです。今回初めて経済産業部会として提案するこ
とができました。事業用資産にかかる相続税の軽減措置は、すでにイギリスやドイツなどで実施されており、我が国への導入を数年前より提案して参りました。
相続時の負担軽減により、若手経営者のやる気と希望をもたらすものとして強力に主張して参りたいと思います。


◆ ④留保金課税制度の撤廃

 中小企業の設備投資・研究開発等を行うための資金の確保や信用力向上等を図るために、利益の内部留保に対する課税の撤廃が大きな課題となっています。平
成18年度の税制改正において、平均並の配当を行えば課税されなくなる改正を実現したものの、配当を行っていない中小企業の多くは設備投資や財務体質改善
のために内部留保充実を図っており、現在の留保金課税制度はこうした未来ある中小企業の発展を阻害しています。今回は制度の全面撤廃を目指します。
 また、私のまわりの中小企業の皆さんから不満の出ている、特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限措置については、影響を見極めた上で、上限金額など必要な見直しを行うことを提案したいと思います。
 こうした税制措置により日本企業の体質を強化することは、経済の活性化、雇用の維持、税収の増加によって社会保障の原資を増やし、ひいては国民全体に利益をもたらすものであり、これら税制改正を実現に向けて取り組んで参りたいと存じます。

新 藤 義 孝