第114号 イラクへ陸上自衛隊を派遣した成果について


◆ 陸上自衛隊の撤収

 およそ二年半にわたる任務を終了し、イラク南部サマワから陸上自衛隊の部隊が撤収しました。2004年1月に先遣隊がイラク入りして以来、約5,500
人の陸自隊員がイラク復興支援に携わりましたが、戦闘行為に巻き込まれることは一度もなく、一人のケガもなく、そして一発の弾も撃つことなく無事帰国しま
した。
 私はかつてイラク戦争の前後に外務大臣政務官を拝命し、イラク人道復興支援特別措置法の成立に奔走しましたが、今また自民党の国防部会長として、イラク
の問題を担当しております。その意味でも、今回のイラクからの撤収は私にとっても感慨深いものがあります。自衛隊をイラクの復興支援に派遣することについ
ては政治的には賛否両論ありましたが、今回は、イラクへ陸上自衛隊を派遣した成果と自衛隊の国際平和協力活動について、考えて参りたいと存じます。


◆ 陸上自衛隊の舞台の活動の成果

 陸上自衛隊は、現地ムサンナー県の人たちの自主的な復興に必要な最小限の基盤を整備するため、現地関係機関と十分調整し、また現地のニーズに最大限配慮
しながら、政府開発援助(ODA)による支援とも連携しつつ、約2年半にわたり、医療、給水、公共施設の修復・整備活動に取り組んできました。
 サダム・フセイン政権下では満足な行政サービスを受けられず、生活の全般にわたり不便を強いられていたムサンナー県において、これら陸上自衛隊の部隊に
よる活動はODAによる支援と相まって、現地の生活基盤の整備、厳しい雇用環境の緩和など、様々な側面で多くの成果を挙げてきました。
 具体的には、医療分野においては、診療・医療技術の指導や簡易診療所(PHC29箇所)の整備等により、サマーワ母子病院で非常に高かった新生児の死亡
率も支援前の約3分の1にまで改善されたほか、ムサンナー県で県民全員が基本的な医療サービスを受けることが可能となるなど医療事情が大きく改善されまし
た。
 公共施設の面では、県内約350校の学校のうち、約3分の1(陸上自衛隊約40校、ODA約70校)が整備され、イラクの未来を担う子供たちが、笑顔で学べるようになるなど、教育環境の改善に尽力しました。
 また、県内の生活道路を約130km(陸上自衛隊は約80km)を整備し、生活道路の交通遮断や渋滞の解消を図ることができました。
 水の分野においても、平成16年3月から17年2月まで、延べ約1,189万人分の給水活動を行ったほか、浄水場の整備などを行い、人々が生きていく上で必要不可欠な水事情の改善に大きく貢献してきました。
 更に、陸上自衛隊による活動の結果もあり、ムサンナー県の行政当局は、自らニーズを発掘し、事業を企画立案できるようになるなど、ムサンナー県行政当局の能力も着実に向上しました。


◆ 陸上自衛隊の活動に対する賞賛

 このような陸上自衛隊の活動は、現地住民、ムサンナー県当局、イラク政府から大変感謝され、高い信頼を獲得しております。また、6月の日米首脳会談にお
いて、ブッシュ大統領からイラクでの陸上自衛隊の活動が成功例のひとつとして賞賛を受けたように、国際社会からも高い評価を受けています。
 私が主宰する自民党の国防関係合同会議においても、イラクでの自衛隊の誠実な活動を評価する声が多くあがりました。


◆ 国際平和協力活動の本来任務化

 イラクでの自衛隊の活動は高い評価を得ていますが、自衛隊の国際平和協力活動は、自衛隊法の雑則などで規定されており、「自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度」で行う「付随的な任務」との位置づけです。
 私は、このような国際平和協力活動を自衛隊の「付随的な任務」から「本来任務」として位置づけ、積極的に推進するべきと考えています。
 今回のイラクでの活動を例とすれば、自衛隊の活動で最も利益を受けて喜んでいるのはイラク国民であり、今後、イラクが安定した民主政権となることによっ
て最も利益を受けるのは、イラクの周辺国であり、世界各国であり、日本です。そして、日本の発展と繁栄は、世界の平和と安定があってこそ、成し遂げられる
ものなのです。
 航空自衛隊は、陸自イラク撤収後の任務拡大により、7月31日にC130輸送機をバグダッドに初めて乗り入れさせ、人道支援物資等を輸送しました。
 今後の空自の活動は、多国籍軍、国連関連の輸送に移ります。イラク各地への任務は依然として危険なものであることに変わりはなく、全ての自衛隊員の任務が無事に完了するまで、私たちも気を緩めることはできません。


◆ 国際協力の体制整備を

 本年6月、防衛庁を「省」へ移行する法案が国会に提出され継続審議となりましたが、国際平和協力活動として行っている自衛隊の活動が本来任務化されるこ
とも法案の大きな柱となっています。これは、自衛隊がさらに効率的に日本の国益のために働き、そして世界の平和に貢献するために必要なものです。
 自衛隊の海外活動を国土防衛と並ぶ本来任務に格上げする、海外派遣に関する恒久法の整備について、次期国会でこの法案を成立させるよう、私も精一杯取り組んで参りたいと存じます。

新 藤 義 孝