第109号 ものづくりを支える中小企業の支援を



◆ 日本のものづくりを支える中小企業の実力

 日本の自動車メーカーが世界のトップに食い込んから久しくなりますが、その競争は熾烈を極めています。このため、自動車部品メーカーに対する要求も大変
厳しいものとなっています。安全性向上を図る一方、環境負荷を低減するための軽量化や作業効率向上のための複数部品の一体化など、技術的な難題が自動車部
品メーカーに突きつけられています。この課題に応えているのが、従業員規模でほんの数人から数十人の中小企業です。
 身近な製品でも中小企業の技術は光っています。例えば、携帯電話の電池ケース。プレス加工技術を用いて一枚の金属板を折り曲げ、小型・軽量でありながら
耐性の高い製品を中小企業が作り上げています。この他にも、鍛造、メッキなどものづくりの基盤となる技術に関して、日本の中小企業は卓越したレベルを実現
しています。その優れた技術が、自動車、携帯電話、液晶テレビ、半導体製造装置など、日本を代表する産業を支えています。また、燃料電池やロボット産業、
福祉機器や医療器具など、今後の成長産業の創出を担うのもこのような中小企業です。さらには、下請企業の地位に留まらず、自ら独自の製品を開発して市場を
切り開く逞しい企業も多く存在しています。


◆ 中小企業が抱える様々な経営課題

 他方、「ものづくり」に長けた中小企業にも、様々な経営上の課題があるのも事実です。一つ目は、人材の確保と育成です。我が国には、ニッチな分野で世界
のトップシェアを占めるような中小企業が沢山あります。しかし、その企業名が地域ですら知られていなかったり、採用活動に力を割けないために優秀な人材が
集まりません。また、採用しても、技術・技能の伝承には地道な教育が必要で簡単には進まないという苦労があります。
 二つ目は、資金の確保です。自社技術に絶対の自信を持ち、「この技術をさらに高めよう」、「独自の製品開発を展開しよう」など高い意欲を持っていても、
銀行の審査能力が不十分で、採算性のあるプロジェクトでも相手が中小企業であるがゆえに融資を躊躇するようなこともみられます。
 三つ目は、大企業との取引関係の構造的な変化です。企業間での競争が激しくなり、従来の固定的な系列関係や取引関係が崩れ、大企業が中小企業に求めてい
るものや、中小企業が目指すべき技術開発の方向性が分かりにくくなっています。そのため、「大企業が抱えている技術的課題さえ分かれば、自社の技術で解決
策を提案できるかも知れない」と考える中小企業の技術力が必ずしも上手く活かされていないのです。
 この他にも、発注元企業との間で不公正な取引慣行が存在したり、中小企業が長年積み重ねてきたノウハウが十分に保護されないなどの課題を指摘する声も聞こえています。


◆「ものづくり中小企業」が主役の時代

 先述したように、ものづくり中小企業は日本経済の基盤を担っています。急速な少子高齢化、国境を越えた競争、とりわけ中国を始めとするアジア諸国とのせ
めぎ合いといった経済環境の先行きを考えると、今後も日本のものづくり産業が、世界中で評価される優れた、便利な、そして環境負荷も少ない「メイド・イ
ン・ジャパン」の製品を提供し続けることが大事です。また、単なる経済活動の場としてだけではなく、従業員にやりがいや自己実現の場を提供し、地域社会の
活力の源泉となる重要な役割も担っています。
 私は、大きな変化が見込まれる「ものづくり中小企業」こそが新たな時代の主役であり、その支援に力を入れていくことが、今の政治に求められている大きな課題のひとつだと思います。


◆ ものづくり中小企業へのバックアップを

 こうした考え方に立って、この度の通常国会では、私が理事を務める経済産業委員会で審議の上、「中小企業ものづくり基盤技術の高度化に関する法律」が成
立しました。自民党内での法案立案作業の過程においても、私は、日本有数の中小企業の街・川口を代表する議員として、ものづくり中小企業の重要性を訴え、
多くの同僚議員の賛同を得て法案策定に力を尽くしました。
 優れた技術に裏付けられた製品は、人生を豊かにするものです。優れた製品は国境を越え、言葉を越え、世界の人々の心に響きます。そのものづくりを支える
中小企業には今後一層の飛躍が望まれているのです。日本という国のブランドイメージを形作り、国を豊かにし、地域に活力をもたらす力を持っている「ものづ
くり中小企業」の前向きな挑戦を、これからもしっかりとバックアップして行きたいと考えています。

新 藤 義 孝