第111号 生活習慣病の予防のために ~国保ヘルスアップ事業について~



◆ メタボリックシンドロームとは?

 最近話題になっている言葉に、メタボリックシンドロームというのがあります。日本人の三大死因はがん、心臓病、脳卒中ですが、心臓病と脳卒中を合わせた
循環器病を引き起こす原因は動脈硬化です。最近の研究では、肥満(特に内臓のまわりに付着した脂肪)が様々な生活習慣病を引き起こし、動脈硬化をより引き
起こしやすいことがわかってきました。肥満症や高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、それぞれが独立した別の病気ではなく、内臓脂肪型肥満が主な
原因であることが指摘されています。
 このように内臓脂肪型肥満により様々な病気が引き起こされやすくなった状態をメタボリックシンドロームといい、治療の対象として考えられています。ウエスト周囲径(へそまわり)が男性で85cm、女性で90cm以上は「要注意」だそうです。さて、あなたは大丈夫ですか?


◆ 生活習慣病予防対策が急務

 医療制度改革関連法が先の国会で成立しました。この法律の骨子のひとつに生活習慣病対策があります。
 この法律がスタートする平成20年4月からは、市が運営する国民健康保険、サラリーマンなどが加入する健康保険、公務員の共済組合など全ての医療保険者に40歳以上の人たちの健康診断や生活習慣病対策が義務づけられます。
 衆議院での国会審議にあたり、厚生労働省の担当者に生活習慣病について説明を求めたところ、総死亡に占める生活習慣病による死亡の割合は6割を越え、一般診療費中に占める生活習慣病の割合は3割を越えていることがわかりました。

 生活習慣病の恐ろしい点は、長期間にわたって無自覚のまま病気が進行していくことです。少々血圧が高かったり、太っていてもあまり気にしないでいるうち
に、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞の発作が起こり倒れてしまうというケースもあります。代表的な生活習慣病は、糖尿病、高血圧、高脂血症ですが、これらの
病気は、そのまま放置しておくと生命に関わる重大な病気につながる危険性があります。
 生活習慣病は日々の暮らしがその発症や進行に大きく関与しています。したがって、食生活や運動など毎日のライフスタイルを見直すことによって予防ができるのです。
 糖尿病や高血圧症などの生活習慣病は予防可能な病気であり、この医療費を削減し国民の健康寿命の延伸を図ることが医療制度改革関連法の大きな目的のひとつです。


◆ 国保ヘルスアップ事業とは

 政府は平成17年度から、市町村の国民健康保険に「国保ヘルスアップ事業」を推進しています。
 この事業は生活習慣病の一次予防を中心に位置づけ、個々の被保険者の自主的な健康増進や疾病予防を図り、ひいては将来的な医療費の伸びの抑制を図るための事業です。
 市町村の担当者が住民のために国保ヘルスアップ事業を実施・企画するにあたっては、厚生労働省が公表している「個別健康支援プログラム実施マニュアル」
があります。全国33カ所の市町村でモデルを指定し、効果的だった保健事業を集約し、その事例やプログラムの企画方法などを紹介したものです。33カ所の
モデルには埼玉県からは草加市が選ばれています。
 このマニュアルにそってヘルスアップ事業を実施すれば、住民の健康度がアップし、医療費も下がり市町村の財政状態も楽になるはずです。
 この事業には、3,500万円を上限とするという国からの助成金があります。100%の補助なので、事業を行う市町村の負担はありません。


◆ 川口市・鳩ヶ谷市での実施を

 今年度(平成18年度)国保ヘルスアップ事業に取り組む自治体は、全国1,820の自治体のうち340自治体にのぼっています。
 埼玉県からは6市町が申請しています。私はこの制度を皆様に広く知っていただき、ぜひ川口市、鳩ヶ谷市にも実施を働きかけていきたいと思っています。メ
タボリックシンドロームが引き起こす様々な病気は何よりも予防が大切であり、予防医療の充実は、皆様の生涯にわたる健康と、ふくらみ続ける医療費の抑制に
もつながるのです。
 国保ヘルスアップ事業をふくめ、地域の健康づくりは、行政だけではなく、地域の医師会等医療関係団体やスポーツジム、運動設備を持つ健康増進施設など様々な関係者が連携しなければ成り立ちません。
 住みよい健康なまちづくりに向けて、私も関係機関と連携を取りながら取り組んで参りたいと思います。

新 藤 義 孝