第113号 わがまちの誇る技術力 ~機械工場の現場を視察して



◆ 日本有数の工業都市、川口

 日本有数の集積率を誇る中小企業の街、川口。その中核は何といっても製造業です。川口はものづくりの街として全国に名を馳せて参りました。本市は、事業所数の中で第二次産業が占める割合がかつて日本一だったこともあるのです。
 工業都市だった川口も、現在は宅地化、マンション化が急速に進み、その人口は50万人に達する勢いですが、住宅地に隣接する何の変哲もなく見える町工場に、世界でもトップクラスの技術が脈々と受け継がれています。
 今回は、全国でも最大級の206社が加盟する川口機械工業協同組合の河村理事長を始め幹部の皆さんに、加盟企業を案内してもらいました。


◆ ものづくりの現場にふれて

 
最初に訪れた会社は、IT機器の回路部品をつくる機械を製造している企業です。ここではかつてマレーシアの製品と競合していたそうで、価格は20%程割高
ですが、納期の早さ、少数でも対応できること、不良品率の低さなどから、今では海外製品を押しのけてメーカーからの安定受注を得るようになりました。
 製造ラインは、小学生の頃から工作機械いじりが趣味だったという根っからの機械屋の33歳の若専務が一手に引き受けており、従業員も20代・30代の若い人が半数以上を占める勢いのある会社です。
 次に訪問したのは、液晶テレビのパネル製造のための機械等をつくっている会社です。2mくらいのアルミのパネルにシャープペンシルの芯ほどの大きさの0.5mmのドリルで1万個~1万5千個の穴を開けます。その機械は、10ミクロン(1ミリの1/100です!)単位での精度を要求されています。
 主に韓国や中国からの受注が多いそうです。ひとつの製品を納品するまでに、市内の企業約30社に作業を分担してもらっているとのこと。
 次は、いわゆる金型屋さんです。
コンピュータのキーボードやテレビ・ビデオ等のリモコン操作ボタン、最近ではデジタルオーディオプレイヤーに使用されるボタン等のゴム製品の金型を設計制作しています。
 髪の毛よりも細い0.01mmのドリルで文字を刻むのはまさに特殊技術で、製品を加工するための刃物を自社でひとつひとつ丸棒から削ってつくっています。
 私が見たのは、分速6,000回転の直径2ミリのドリルを使い、製品を3/100ミリ削るという作業でした。
 この会社でも、当初メーカーが発注していたインドネシアでは必要な精度が得られなくて、仕事を任されるようになったのだそうです。
 最後に訪れたのは、機械を削るための超合金のドリルをつくっている会社でした。製造している工具は全て特別注文で1,000品目程もあり、日本でも数社しかないという、極めて特殊な技術を持ったところです。
 視察をしながら社長さんたちに話を聞くと、異口同音に唱えるのは、川口市内にいないと仕事にならないということでした。今回視察した会社はもとより、こ
の街は、例えば、鋳物で形をつくり、工作機械で加工し、磨き、穴をあけ、塗装し、そうした工具もこの街でつくり、ひとつの仕事を30から50の会社が共有
するネットワークが形づくられています。それが、私たちの街の製造業の特色なのです。


◆ 工場立地政策の整備を

 原材料から組み立てまであらゆる業種がそろっている地場産業の集積の街は、全国でも類を見ません。
 地方分権の流れの中では、街がそれぞれ独自の魅力と特徴を持つことが、都市間競争に打ち勝つ必須の条件です。商業の発展、福祉の充実、教育の高度化、様
々な要素が街の魅力には必要ですが、私たちの街は製造業で発展してきました。その歴史と現在の集積はかけがえのない街の財産です。
 現在、政府は経済成長戦略の大きな柱としてものづくりを据えており、国を挙げて製造業をバックアップする仕組みを整えようとしています。私も先の通常国会では、中小企業ものづくり基盤技術高度化法の成立に力を尽くしました。
 川口市の製造業の存続のために、現在の一番の課題は、この街に適した工場立地政策を打ち立てることです。人口が増え住宅が増えるとともに操業環境は年々
悪化しています。この街にも、技術力を持った力のある企業が次々に育っていますが、そうした企業が新たに工場を建てようとしたときに、例えば川口市が持っ
ている未利用地を都市型の工業団地として利用できるようにしてはと考えています。国県市の各議員や行政と連携をとり、わが街の活性化のために、私もぜひ働
きかけていきたいと思います。

新 藤 義 孝