第102号 「ようこそジャパン」キャンペーン



◆ 日本は33位?

 天候にも恵まれた今年のゴールデン・ウイーク。皆様はどう過ごされましたか? 報道によれば今年の大型連休中の海外旅行者数は過去最高だったそうです。
 ところでわが国は、海外への旅行者は大変多いのですが、反対に日本を訪れる外国人の数はかなり少ないという特徴があります。外国を訪れる日本人は年間に約1,600万人位いますが、日本を訪れる外国人は約500万人とその3分の1ほどです。
 
日本人の年間出国者数は世界第11位ですが、外国人旅行者の受入数は世界第33位、アジアの中だけで比べても第8位という意外なほど低い順位です。アジア
1位の中国は世界ランキングでも5位と、わが国とは比べようもありませんが、韓国やシンガポールなどでは国を挙げて熱心に外国人招致をして結果を出してい
る国もあります。
 日本の出入国者数におけるこのような著しい不均衡はどんな問題につながるでしょうか。直ちに影響するのは、国際収支の中の旅行収支という項目の赤字とい
うことでしょうか。旅行収支は最近はだいたい2兆円から3兆円程度の赤字で推移していますが、日本に入国する外国人が使うお金よりも日本人が海外で使うお
金の方が多いので、これは当然のことです。しかし日本はその何十倍ものお金を外国にモノを売ることで稼いでいますから、旅行収支の赤字が日本の国際収支の
バランスを危うくするということはあまり心配しなくても良さそうです。


◆ 国家戦略としての観光

 むしろ数字に表れない影響を懸念すべきではないでしょうか。一言でいえばそれは国際相互理解の希薄さ、ということです。
 観光を通じて、人が交流し、それに伴って互いの文化や生活習慣、ものの考え方について理解を深めることが、国のイメージや評判につながっていきます。
 観光は、世界一の輸出産業とも言われ、経済や雇用に大きな影響を及ぼしますが、単なる経済収支の問題だけではなく、外交や安全保障にも波及する、大切な国家戦略といえるのではないでしょうか。
 世界中の人々が、日本と日本人について正しい理解を深めることが、わが国に対する信頼や好感度の向上につながっていきます。観光は、国家戦略として大いに力を入れるべき分野だと私は考えています。


◆ 観光立国基本法の制定に向けて

 政府は「観光立国」という呼び名で観光を重視し、その一環として平成15年春からビジット・ジャパン・キャンペーンを実施しています。平成22年までに
1,000万人を目標に、もっと多くの外国人に日本を訪れてもらうため、外国の観光関係者を招いて日本の観光をPRしたり、小泉総理も自らテレビコマー
シャルに出演して、「ようこそ、ジャパン」と呼びかけたりしました。政府・民間挙げての招致運動の結果、平成17年の外国人訪問者数は過去最高の673万
人まで増えました。この国際観光の伸びにより、平成16年度の国内旅行消費額及びその経済波及効果は増大し、額にして55兆円余り、475万人の雇用創出
効果が推計されるほどになっています。
 ところが国の政策の基本となる観光基本法は、昭和38年に制定されて以来43年間一度も改正されておらず、観光に対するこれまでのわが国の取り組みを象
徴したものといわざるを得ません。自民党ではプロジェクトチームをつくって法改正に向けて作業を進め、5月10日の国土交通部会で「観光立国推進基本法
案」が審議され了承されました。今国会提出に向けて手続きが進みます。


◆ YOKOSOの気持ちを持って

 
外国を訪問するとき、私はいわゆる名所旧跡ばかりでなく、必ず街の市場や普通の商店などその国の日常の暮らしに触れられるように街を歩いてみます。パンや
ジュースを片言の言葉で買うときの楽しさは格別です。その国の普通の人々との何気ない会話や笑顔によって、訪問した国のイメージが決まってしまいます。
 今回、観光立国について考えながら、私の日常において仕事以外にほとんど外国人との触れ合いがないことに気づきました。
 私たちの街、川口・鳩ヶ谷地区は外国人居住者の数が埼玉県内で最も多いと言うことをご存じでしょうか。「わが国の観光とは?」などと大上段に振りかぶら
なくても、私自身まずは日常の暮らしの中で外国人との触れ合いを意識し、YOKOSO(ようこそ)の気持ちで街の中を見つめ直してみようと思っています。

新 藤 義 孝