第64号 三角形が描けない子どもたち    睡眠リズムの乱れと子どもの問題行動

 以前この週刊新藤でも取り上げさせていただいた子どもの精神的な障害。とりわけ、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)等といった問題について、睡眠リズムの乱れがその原因のひとつと考えられるという研究が最近なされています。


◆ 少し「気になる」子どもたち

 政治の世界に身を置く私にとって、小さな子どもたちと接する時間は、心休まる実に貴重なひとときです。私が園長を務めるふたば幼稚園の子どもたちは、みんな素直で明るく元気な子ばかりで...と言いたいところなのですが、中にはちょっと「気になる子」もいます。それは、みんなが楽しく遊んでいる中ひとり無気力であったり、特にわけもなく攻撃的だったり、我が強くて通らないとバニックになる、などの行動を起こす子、などです。
 現代を生きる子どもたちは、私たち大人が考える以上にさまざまな悩みやストレスを抱えていると言われています。こうした問題は、より専門的には小児神経
科の専門医と連携して対処すべき課題であり、私も政治家としてそうしたネットワークづくりにも着手しています。それと同時に、教育者としての立場から、こ
うした子どもたちを現場でどう指導していったらいいのか、その方法も模索し続けています。


◆ 三角形を模写できない幼児たち

 しばらく前の話になりますが、新聞で興味深い記事を読みました。幼児の脳の発育と睡眠環境との関係を調べている大学の先生の研究結果です。それによる
と、5歳児を対象に三角形を描かせる調査をしたところ、角がなく丸いもの、斜線がギザギザになっているものなど、きちんとした三角形がかけない子どもたち
が増えているというのです。
 そして、2週間にわたり子どもたちの睡眠時間を調べてみた結果、寝起きの時間に1.5時間以上のばらつきがある子どもたちの76%が、保育者から
「ボーッとして無気力」「理由のない攻撃性を示す」など「気になる子」だとの指摘を受けており、また36%が三角形の模写が上手にできない子どもでした。
一方、睡眠リズムが正常な子どもたちの方は、「気になる子」と指摘されたのは12%、三角形の模写ができない子も11%だけだったというのです。
「三角形の模写は、視覚認知を運動機能に結びつける能力の検査で、水平や垂直な線に比べて難しいため脳の発達を調べる指標になると考えられている。一般的
に4歳半から5歳半にかけて可能になるといわれており、三角形がうまく描けないということは、それだけ発達の過程が阻害されている、という意味になる」の
だそうで、睡眠リズムの乱れが脳と情緒の発育に悪影響を与えている可能性があるという、実に考えさせられる指摘でした。


◆ 夜型化する子どもたち

 朝元気良く家を出て、昼間は思う存分体を動かし、夜には遊び疲れてぐっすり眠る、というのが子どもたちの本来の姿であるはずです。
 ところが、24時間営業の店や娯楽施設の増加など親御さんのの生活が深夜化する中で、子どもたちの日々の生活がその夜型のサイクルに合わせざるを得なく
なっている現状もあるのでしょう。もう少し年齢が高くなると、受験勉強やテレビゲームに夜遅くまで熱中したりすることで、さらに就寝時間が遅くなってし
まっているのでしょう。
 右記の就寝時間についての調査結果を見ると、この20年間で、10時以降に寝る子どもは2倍以上に増えており、特に4~6歳という活動が活発になる年齢での夜更かし率は4倍にもなっています。
 本来、体温が最も高くなり活動的になるのは午後3時頃だそうですが、遅寝・遅起きの子どもは、朝は眠っている時の低体温の状態で起こされて、機嫌の悪い
まま午後まで過ごしてしまいます。そして、夜になってから体温が上昇して活動的になるため、寝かしつけても眠れないという悪循環に陥ってしまうのだそうで
す。


◆ 親の夜更かしが子に影響

 かつては、夜の8時ともなれば子どもが楽しんで過ごす手段はなかったものですが、現在は、レンタルビデオの普及やテレビの多チャンネル化で子ども向けの
番組が四六時中見られる状態にあります。親と一緒にテレビを見たり、ゲームをすることで夜遅くまで起きているというケースも非常に多いと考えられ、子ども
の夜更かしに対する親の抑制意識も大分低下しているように思えます。
 楽しいことがたくさんあれば、子どもはなかなか布団に入りたがらず、寝かせるのはひと苦労でしょう。しかし、子どもたちの心や情緒を健全に育むためには、現代社会の生活リズム、私たち親の生活スタイルを見直してみることも必要なのではないでしょうか。

新 藤 義 孝