第60号 環境問題を考えるヒント もったいないお化け と 「MOTTAINAI」運動


「もったいない」の意味

 皆さんは「もったいないお化け」というのをご存じですか? 昭和57年から放映されていた、公共広告機構のテレビコマーシャルです。

 お寺に泊まりに来た子どもたちが、晩ご飯をご馳走になるのですが、
「オラ、大根きらいじゃ」
「ニンジンきらいじゃ」
 と不平を言い、出された食事を残してしまいます。するとその夜、子どもたちの寝床に野菜の顔をした大きく恐ろしげなお化けが現れて、
「もったいね~」
「もったいねぇ~」
と言いながら迫ってくるのです。
 翌日子どもたちはすっかり改心し、最後に「それからは、みんな残さず食べるようになったそうな」というナレーションが入ります。

 このCMも、見なくなって久しいですが...

 かつて、ほんの5・60年前、日本にも社会全体が貧しい時代がありました。私の祖母も、母も、何かに付けて「ああ、もったいない」と言っては物を大切に
していました。しかし、物質的な豊かさを実感できるようになった高度経済成長期を迎えると、消費が奨励され、食べ物はあまったら捨てられ、商品は使い捨て
が当然という風潮が生じてきたように思います。そして現在では、社会の経済システムも個人のライフスタイルにおいても、大量生産・大量消費・大量廃棄の仕
組みが出来あがっています。

 「もったいない」という言葉は、単に金品を惜しむものではなく、限りある資源を無駄にせず、日々の暮らしの中に効率的に活用していこうという考え方が表れています。
 最後の一粒まできちんとご飯を食べるのは、決してケチだからではなく、お米をつくった人の労苦に対する感謝の気持ちを込めているからです。これは、世界に誇れる日本人の美徳だと思います。


◆ 「MOTTAINAI」を世界に

 近年聞かれることが少なくなったこの「もったいない」という言葉が、最近になって脚光を浴びています。

 愛知万博の開会式で、小泉総理が政府としても「もったいない」キャンペーンを展開するという考えを表明したのを皮切りに、「もったいない」をキーワード
にした環境への取り組みが、県や市など多くの自治体にも、そして様々な民間の団体にも広がっています。こうした動きの引き金となったのが、ケニアの副環境
大臣ワンガリ・マータイさんが提唱する「MOTTAINAI」運動です。

 マータイさんが今年2月に来日した際に、日本人の物を大切にする心を表した「もったいない」という表現を知り、この言葉に、消費削減(リデュース)・再使用(リユース)・資源再利用(リサイクル)・修理(リペア)という環境保護の4R
意味が込められているとして深い感銘を受けたのだそうです。「もったいない」に相当する意味の言葉は英語にはないそうで、3月に開催された「国連婦人の地
位向上委員会」の演説で、「限りある資源を有効利用し公平に分配すれば、資源をめぐる紛争は起きない。『MOTTAINAI』を国際語として世界に広めて
いきたい」と呼びかけました。

 マータイさんは、アフリカ各地に3000万本以上の植樹をしてきた「グリーンベルト運動」の創設者。草の根の植林活動を通じて紛争や貧困の解決、女性の
地位向上、民主化推進など幅広く貢献したことが評価され、環境分野では初めてとなるノーベル平和賞を昨年受賞しています。


◆ 日々の暮らしの中で

 環境問題は、次世代の子どもたちのためにも、私たちが真剣に取り組んでいかなければならない共通の課題です。私も、今後も様々な観点から取り上げていきたいと思っていますが、しかし、それはそんなに難しく構える必要はないのです。

 「勿体」とは、「そのものが本来もつ価値」という意味だそうです。「勿体ない」とは、その価値が活かされず、無駄になるのを惜しむ気持ちです。日々の暮らしの中で「もったいない」と気づくことこそが、環境問題を考える第一歩となるのです。

 私たちが忘れかけていた「もったいない」を再認識させてくれたマータイさんに感謝の気持ちを込めながら、私も「勿体ある生き方」を心がけていきたいと思います。


◆ 「初扇」の田植えを実施

 週刊新藤55・56合併号(「新たな名産品 生まれる!わが街の地酒」)でご紹介した川口産の日本酒「初扇」。6月5日に川口市木曽呂の水田で、この「初扇」を企画した川口食文化研究会の皆さんによる田植えが行われました。
 当日は生憎の曇り空でしたが、田植えに参加した皆さんの「自分たちの街の地酒を、自分たちの手で米からつくる」という熱気が伝わってくるようでした。

 おかげ様で多くの皆様から好評をいただいているこの「初扇」。従来の一升びんに加えて、現在は二合びん(360ml)と四合びん(720ml)も発売されています。ぜひ皆さんもお近くの街の酒屋さんでお尋ね下さい。

 川口ブランドの創出による地域産業の活性化。そして、それを産み出すプロセスにおける多くの人たちの暖かい交流。川口の活力をつくりだす「初扇」の試みを、私はこれからも応援していきます。

新 藤 義 孝