第48号 ラグビーがつくる地域の輪 ~総合型地域スポーツクラブを目指して~

川口市ラグビーフットボール協会 http://urawa.cool.ne.jp/krs/


[川口市ラグビー協会の活動]

 
荒川河川敷の広いグランドを、子どもたちが縦横無尽に駆け巡っています。その熱気のこもったタックルに、受け止める私の腰にも力が入ります。私が会長を務
めさせていただいている川口市ラグビーフットボール協会では、毎週日曜日に小中学生のラグビースクールを開催しています。お子さんの数はおよそ100名。
子どもたちの元気な姿を頼もしげに見守る親御さんたちも、とても楽しそうです。
 幼稚園から中学生まで5つのグループに分けられたチームの指導を行うのは、56人のコーチたちです。もともとのプレーヤーもいれば、子どもに引きずられ
てコーチ資格を取った人まで色々です。このコーチたちでつくるお父さんのチーム「ダーリンズ」が結成されています。また、お母さんたちも当初は応援と食事
などのお世話をするだけでしたが、いつの間にか熱が入り、「ハニーズ」というチームも誕生しています。
 この他、社会人のチームが2チーム60人あり、現在250人の協会です。8年前の設立当初は28人からスタートしたので、当初から会長を務めている私と
しても感慨深いものがあります。設立当初は、土手の上の小道で石拾いから始まりました。グランドを確保したり、川口市体育協会に加入したりと、たくさんの
方々にお世話になりながら、協会もどんどん充実しています。

 私はこの活動を通じて、スポーツの素晴らしさを改めて意識するようになりました。体を鍛え、心を鍛え、ルールの中でフェアに戦うスポーツマンシップを身
につけることはもちろんですが、それに加えて、スポーツを通じて新しいコミュニティが楽しみながらでき上がっていくのです。例えば、ラグビーの仲間たちか
らはこんな声が聞こえてきます。
「ラグビーをやる前は自宅と会社の往復だけだったが、子どもに連れられてグランドに足を運び、いつの間にか仲間ができた」「よその街から越してきた自分に地元の友だちができた」「グランド周辺の石拾いや土ならし、草むしりなどボランティア活動の喜びを知った」等々。
 子どもたちは、体力や技術の向上のみでなく、協調性や責任感、忍耐力、相手への思いやり、礼儀や挨拶といった精神的・社会的に必要とされる要素も学びま
す。たくさんの親御さんたちが、自分の子も他人の子も等しくその心身の成長を見守っています。ラグビーを通じて、新しい地域の輪が、新たなコミュニティが
誕生したのです。

 
ラグビーというスポーツによって自分の居場所をつくることができたことが、何よりも都市化が進む社会において、とても有効なことだと思っています。もちろ
んそれはラグビーに限ったことではありません。私は昨秋に、キッズサッカーの大会を企画・開催させていただきました。また、野球やバレーボール、ゲート
ボール、ターゲットバードゴルフ、インディアカ、ミニテニスなど、種々の活動に参加しています。それぞれのスポーツを盛んにすることが、街づくりにつな
がっていくからです。
 そして私たちは、これまでの活動を踏まえて、ラグビーを中心とした新しい地域コミュニティ活動として、「総合型地域スポーツクラブ」の設立を目指すことにしました。過日、県体育協会に設立申請を行い、新年度での認可を狙っています。

[統合型地域スポーツクラブとは?]

地域住民が自主的に運営する、子どもから高齢者、障害者まで誰もが参加できる多種目型の公共性を伴ったスポーツクラブで、以下の特徴をもっています。

①種目が多く、それぞれに専門の指導者がいるため、自分に適したスポーツに出会うことができる。

②幼少時から高齢になるまで長期にわたって同じクラブに所属することができるため、地域住民のコミュニケーションの拠点となりうる。

③様々な年齢層の人たちが一緒にスポーツを楽しむことができ、社会性やマナーを学ぶこともできる。

④長期的な視野に立ち、一貫した指導を受けることができる。

⑤受益者負担が基本だが、公共性の高いクラブとして低料金システムを導入することができる。

⑥総合型化により施設使用の調整が比較的容易となり、公共スポーツ施設を効率よく利用できる

 ヨーロッパ諸国ではスポーツが生活に根づいており、住民の多くが地元の総合型クラブに加入し、地域の活性化にもつながっています。
 我が国でも、平成12年に文部省が策定したスポーツ振興基本計画で生涯スポーツ社会の実現に向けた総合型地域スポーツクラブの育成プランが掲げられており、行政側からの支援体制も整えられつつあります。
 県内でもこの総合型地域スポーツクラブは増加しており、昨年は11の団体が認可され、それぞれ地域に根付いた活動を展開しています。

 私たちの動きが契機となり、ラグビーだけでなく様々なスポーツ団体が積極的に地域との連携を図っていく。そして、誰もが笑顔で生き生きと各々のスポーツシーンを満喫し、新たな地域の輪が生まれてくる。そんな光景を夢見ながら活動を続けて参ります。

新 藤 義 孝