第47号 全国シェア95%の農産物が川口に!ぼうふうと筆生姜

 刺身や和え物、吸い物などに彩りを添える「つまもの野菜」。目で食べるとも言われる日本料理には欠かせない引き立て役です。その中でも高級食材として用いられている「ぼうふう」の9割以上が私たちの街でつくられていることを、皆さんはご存じでしょうか?

 
川口市は、古くから大消費地・江戸近郊の街として、高度な技術を活かした様々な農産物の生産が行われてきました。それは現代にも受け継がれ、神根地区では
今でも約40件の農家によって武州軟化蔬菜出荷組合(田中吉良組合長)が組織され、伝統を守り続けています。「つまもの」と呼ばれる野菜のうち、ぼうふうは全国で神根地区だけが本格的な生産を続けており、実に全国シェアの95%を占めています。これまで、NHKなどのテレビ番組でも紹介されてきました。
 私も、過日この出荷組合の総会にお邪魔したときに、改めて我が街の特産物の素晴らしさを再認識させていただきました。そこで、私がこのことを広く皆様にご紹介したいと申し上げたところ、大変嬉しいことに地元の大先輩からご投稿をいただいたのです。


今回ご投稿をいただいた

川口市木曽呂 石井 光さん

(武州軟化蔬菜出荷組合・元組合長)

「川口市北部の農産物」
 川口の特産と言えば鋳物と植木が有名ですが、神根地区北部には長い歴史を持った伝統ある農産物があります。今回はそのいくつかをご紹介いたします。

[もやし生姜・筆生姜]
 生姜は「薑」と書くのが正しいと言われています。このもやし生姜は今より約300年余り前、元禄時代からこの地で栽培されていたと言われています。驕奢
華美を好む時代に、上流社会の宴席にて実を食し、そのあと口の臭いを消すために食膳に用いられたのが始まりであると言われています。日本料理には欠くこと
のできない食材のひとつです。
 もやし生姜は土むろで栽培するため設備管理が難しく、やがて姿を消してしまいました。その名残として、現在では夏物の筆生姜(1本ずつ切り、これを30本の束とする)として、7月上旬より10月下旬頃まで東京二大市場(築地・太田)に出荷されています。この二市場で取り扱う量の70%はこの神根北部の産であり、仲卸業者の手を経て遠く関西及び東北・北海道まで出回っています。

[防風(ぼうふう)]
 ぼうふうは、
海岸の浜辺に自生している浜防風を園芸用に選抜を重ねたもので、独特の芳香と辛みがあるセリ科の多年草です。もやし生姜と同じく元禄ごろから栽培されてい
るようです。主に「毒消し」や「臭み消し」として生料理の添いものに用いられることが多く、高級食材として珍重されています。
 古くから若芽を酢の物にして食べたり刺身のつまとして用いられていますが、最近では吸い物や蒸し物の材料、揚げ物、ごま和えなど広範囲に利用されています。
 また、茎と葉の部分は抗酸化の働きが強く解熱・鎮痛・強壮・沈咳の作用があり、風邪・頭痛・関節痛などに有効とされ、漢方薬としても用いられます。
 このぼうふうも二大市場における年間取扱量の95%は神根北部産のものであり、全国各地へと出荷されています。

 なお神根地区ではこの他にも、およそ70%の全国シェアを占める木の芽(山椒の新芽)や、縁起がよいとされおせち料理などによく使われる八頭(やつがしら)なども生産しております。またの機会にぜひご紹介させていただきたいと思います。


ぼうふうを生産している

川口市東内野 守谷賢一さん

(武州軟化蔬菜出荷組合・前組合長)

 今回いただいた手紙の文面からは、この街の伝統的特産物とそれを継承していく誇らしさが読み取れました。我が街の歴史と伝統を見つめ直し、郷土への愛着
や誇りを感じることは、とても嬉しいことです。今後も機会を捉えて、我が街の伝統をご紹介して参りたいと思います。

新 藤 義 孝