第46号 架空請求・不当請求に屈するな! ~巧妙化する詐欺師たちの手口とその対策~

 サイト管理者や債権回収業者を装った者が、利用料金・遅延損害金・回収代行手数料などの名目で根拠のない支払を請求する通知を、ハガキや封書、電子メールなどで一方的に送り付けてくる架空請求。いきなり「最終通達書」「支払催告通知書」などと受取人に不安感を与えていくのが架空請求の特徴です。

 もし架空請求が届いたら「支払わない」「相手に連絡しない」「無視する」という対応が最善です。記載されていた電話番号に連絡したために、脅迫電話が続くようになるなどの被害を受けたという事例も多いのです。架空請求かどうか確認したいのであれば、業者に問い合わせるのではなく、お近くの消費生活センターや警察に相談しましょう。

川口市消費生活相談コーナー[相談専用]048-258-1241
埼玉県消費生活支援センター[相談専用]048-261-0999

[増え続ける振り込め詐欺事件]

  警察庁発表によると、昨年1年間に全国で発生した「振り込め詐欺」事件は計2万5,667件、被害総額は約283億円に上っています。先月末には、川
口市元郷で元ヤミ金業者と少年ら14人が逮捕されるという事件がありました。これは、暴力団関係者による広域な組織的振り込め詐欺集団のひとつと目されて
おり、全体の被害総額は200億円を超える可能性があるとも言われています。
 手口はより巧妙化し、ターゲットとなる人物の個人的な情報を調べ、悪用するものも増えています。アダルトサイトの利用料や債権回収など、「事を荒立てた
くない」という心理を巧みに利用する不当請求なども人の弱みを狙ったものです。さらに悪質なことには、災害時に人を助けてあげたいという思いを逆手にとる
ケースも現れました。新潟県中越地震やスマトラ島沖地震の際には、義援金と称した振り込め詐欺が続出したのです。
 昨年末、振り込め詐欺等に銀行口座が利用されることを抑止するための「預金口座等の不正利用防止法」も施行されました。しかし、こうした詐欺事件を減らしていくには、私たち一人ひとりが正しい知識を持ち、毅然とした態度で対応することが不可欠です。

[巧妙化するオレオレ詐欺]

 警察官や暴力団員、会社の上司、弁護士などの第三者になりすまし、複数の犯人による巧みに演出された手口が増えています。警察の調べでは、話の内容は、交通事故の示談、借金返済、妊娠中絶費用等の理由が全体の約9割を占めるそうです。

電話を受けた際の対処法は?
①必ず「どちら様ですか?」と相手の名前を確認しましょう。決して自ら親族等の名前を言わないように。
②怪しいと思ったら相手がしつこく話してきても一旦電話を切ること。
③電話を切ったら、本人の職場や携帯などに連絡して、直接話を聞く。
④事実かどうか確認できるまで、決してお金を振り込まないこと。

[少額訴訟制度を悪用するケースも]

 架空請求は無視するのが定石ですが、それを逆手にとった手法も出てきました。架空請求の通知を無視していたら、突然、裁判所から呼出状が届いた ―
これも自分には関係ないと高を括っていたら、いつの間にか自分が裁判に負けたことになって、業者から合法的に料金を請求されることになってしまった・・・
 業者が請求の根拠がないにもにもかかわらず「少額訴訟」という裁判を起してくるのです。この制度は手続きが簡単で、書式が整っていれば内容の真偽に関係なく申し立てが認められてしまいます。その日のうちに判決が出るという簡易な訴訟制度であり、欠席した場合はその訴えを認めたと見なされてしまいます。

裁判所から通達があった場合には
①書類の送付元が裁判所の場合、身に覚えがなくても本物かどうか確認する。裁判所からの通知は特別送達という特殊な郵便で送付されます(手渡しされることが原則)。ハガキや普通郵便(郵便受けに普通に入っているもの)で届くことはあり得ません。
②書類に書かれた電話番号にかけると悪質な業者に番号を記録される恐れがあるため、「104」で確認した上で当該裁判所に電話する。
③正式な書類とわかったら、消費生活相談窓口などで相談した上で、裁判所に異議の申し立てをするなど法的対応を取る。

[インターネットを利用した詐欺]

 ネット詐欺の中でも最近急増しているのが「ワンクリック請求」
呼ばれるもので、出会い系・アダルトサイト等の画面をクリックしただけで自動的に会員登録されてしまい、高額な会費を請求してくるという不当なものです。
架空請求とは異なり、サイトを見たという利用者の心理につけ込んで数万円の料金を請求し、「払わなければ住所や勤務先を調査する」などと脅す悪質な手口で
す。

ワンクリック請求の画面表示例
[登録確認]
振込ID番号: IDxxxxxxx
パスワード: IDxxxxxxx
ご登録日時: 2005/xx/xx xx:xx:xx
あなたのIPアドレス: 192.xxx.0.1
あなたの接続情報: xxxxxxxxxxxx..net
ご利用料金: 50,000円
振込期日 登録日から 3 日以内

 
支払期限を過ぎても入金確認が出来ない場合、料金未納者と判断し、上記固体識別番号から契約者情報(氏名、性別、生年月日、住所、勤務先等)を調査し、別
途調査費用・延滞料金等を加算して御請求させて頂きます。さらに入金確認が取れず悪質ユーザーと判断された場合には、金融機関提携の個人信用情報機関に
「事故情報」として貴殿の契約者情報を提出し、法的処置等を取らせて頂きます。

 上記のような例で、IPアドレス、接続情報、固体識別番号などといった記述に驚いてしまい、自分の個人情報が相手に伝わってしまったと思い込んでしまう
ケースが多いようです。しかしこちらから入力をしていない限り、原則として相手に個人情報を知られることはありません。また、電子消費者契約法に基づき、料金支払い意思の確認なしで申込を受けたとする請求に対しては支払いをする必要はなく、かつ、支払う意思のないことを不当請求業者に伝える必要もないのです。
 慌てて退会手続きや業者への問い合せなどをしないように気をつけましょう。あなたのメールアドレス等が入手され、業者の思う壺です。

IPアドレスとは?
IP
アドレスとは、インターネットに接続したときにプロバイダ側からコンピュータごとに割り振られる識別番号です。あくまでもコンピュータを識別するためのも
ので、住所や電話番号などの個人情報は特定されません。プロバイダ側も、警察や司法機関等による公式な開示命令があった場合を除き、民間企業や個人からの
要請で個人情報を開示することはできません。

[携帯メールのフィッシング詐欺]

 パソコンの場合と似た手口ですが、携帯電話会社やクレジット会社を装ったり、「プレゼントが当選しました」などと書かれたメールが届き、そこに記載され
たURLをクリックしただけで自動登録され高額の利用料が請求される詐欺が広がっています。クリックした時点でこちらの電話番号が相手に通知される仕組み
になっている場合もあります。
 いずれの場合も、興味本位で気軽にアクセスするのはやめましょう

 詐欺師たちはますます巧妙な手口を考え出し、私たちにお金を払わせようと狙っています。一度払うとカモと見なされ、何度も請求されかねません。不当な請求にはNOと言う毅然とした態度を貫きましょう。

新 藤 義 孝