第30号 犯罪被害者支援制度、大きく動き出す! ? 埼玉県議会で意見書採択に ─

犯罪被害者の支援について週刊新藤25号でご紹介したところ、読者の皆さんからとても大きな反響と激励のメールをいただきました。この問題は今、大きな転機を迎えています。そこで今週号では、犯罪被害者支援を取り巻く様々な現状についてご紹介したいと思います。

[埼玉県議会で意見書採択に]

「全国犯罪被害者の会(あすの会)」
http://www.navs.jp/
の方々と県議会に要請を行う。

私にとってこの問題への取り組みは、一通の相談メールから始まりました。送り主である川口在住のAさんにお会いした私は、精神障害者にお母さんを殺害さ
れ、泣き寝入り同然となってしまったという悲痛な訴えに胸を打たれました。Aさんのような方が全国で集まって、「全国犯罪被害者の会(あすの会)」という
組織がある事も教えて頂きました。Aさんからは、埼玉県議会に請願を出したいので協力して欲しいという要望があり、私は早速行動を取り、地元の奥ノ木・田
中両県議の協力のもと、被害者の方々と大石自民党県議団長にお会いし、県議会議長宛に「犯罪被害者の権利と被害回復制度の確立を求める意見書」を提出して
参りました。

おかげ様でその意見書は埼玉県議会に付託され、審議の結果、最終日の10月13日に全会一致で採択されました。そしてこの意見書は、地方自治法第99条に則り、総理大臣・法務大臣・衆参両院議長等へ提出されたのです。

これまで埼玉県にはこのような動きがなく、関係者からはお礼の言葉をいただきました。しかし、国に意見書を出すことのみが目的ではありません。重要なことは、一刻も早く意見書の内容を実現させなければならないのです。

[議員立法への動き]

一方で国会においては、自民党のプロジェクトチームで検討されてきた「犯罪被害者基本法案」が、党内の手続きを経て、公明党との与党内調整の後、10月13日に両党の政策責任者会議において、今国会に議員立法で提出し成立を目指す方針となりました。

この基本法案の要旨は、
①被害からの早期回復を支援し社会へできるだけ早く戻れるよう、医療や福祉・住居の用意など支援策を切れ目なく総合的に実施すること。
②公判など刑事手続きに被害者がかかわる手段を確保すること。
となっています。


来の我が国の刑法においては、裁くのは司法機関、裁かれるのは加害者であり、事件の一方の当事者である被害者は蚊帳の外という状態でした。被害者やその家
族を司法の対象に取り入れた今回の基本法案により、我が国の法制度は画期的な転期を迎えたと言えます。今回の立法作業は、終始国会議員主導で行われて参り
ました。私が連絡を取らせて頂いている自民党プロジェクトチームの基本法制小委員長を務めた塩崎恭久議員は、今国会よりこの法案を所管する衆議院法務委員
長に就任しました。こういったことからも法案成立に向けての準備が整ったことがおわかりいただけると思います。

[政府の動き]

国会議員が精力的に動き出すことにより、行政側も制度改正に重い腰をあげることになりました。法務省は10月14日(与党決定の翌日です!)、犯罪被害者
への支援充実のため新たな専門職として「被害者支援官(仮称)」を平成17年度にも新設するという方針を発表しました。この支援官には、社会福祉や心理学
の専門的知識を備えた常勤の国家公務員が想定されており、全国に50か所ある保護観察所すべてに配置する方針で、保護司と協力して支援活動にあたることに
なります。


体的な役割としては、被害者に対して特に心理面での様々な助言を行うことや、加害者の出所情報や更生状態についての情報を被害者に伝えたり、被害者の気持
ちを加害者に伝達する仲介役を務めたりすること、また、事件を契機に被害者が転居を余儀なくされた際の公営住宅への入居手続きや医療支援を受ける際の手続
きについて地方自治体など関係機関との調整役となること、などが想定されています。

さらに法務省においては、加害者の更生を担ってきた保護司を犯罪被害者支援にも活用するため、保護司法の改正案を来年の通常国会に提出を予定するなど、犯罪被害者支援の体制は急速に形を整えられようとしているのです。

[私に出来ること]

以上ご報告させていただいたように、犯罪被害者の支援問題は大きな転換期を迎えています。加害者の人権問題に比べ、従来取り上げられることの少なかった被害者の支援・保護という、本来あるべき姿が加えられようとしています。

この問題の前進には、何よりも多くの皆さんが現状を知り、意識を共有し、声を上げていただくことが有効です。また、私自身、たとえ議席を持たずとも、政治活動を通じて被害者支援に取り組むことは、政治に携わる者の当然なすべきこと、と考えております。

今後私は、埼玉県議会に引き続き、県内各市議会での意見書採択に向けた活動を展開していきたいと思っています。まず始めに、今回相談を受けたAさんと私た
ちの住む川口市、また、警察の捜査怠慢を争点に現在公判中の桶川女子大生殺人事件の被害者家族が住む上尾市に働きかけをおこなっていくつもりです。

現代社会において、犯罪は年々多発化、凶悪化しています。誰もが犯罪に巻き込まれる可能性のある現在、犯罪被害者の視点からの制度を構築することは何より急務であり、私はこれこそが政治の責任と心得、引き続き精力的に活動して参ります。

新 藤 義 孝