第28号 川がキレイによみがえる! ー芝川・綾瀬川等浄化導水事業 ─

都市河川の汚染や悪臭への取り組みは、暮らしの大きな課題です。キレイな水の流れは、魚や鳥が水辺に戻り、うるおいのある環境を創り出します。
今回は、汚濁した川を清らな流れによみがえらせるために、地下鉄トンネルを使った河川浄化について皆様にご紹介します。

[ 芝川・綾瀬川の水質事情 ]

私たちの暮らす街を流れる芝川や綾瀬川などの都市河川は、流域に山地がないため高低差が小さく、もともと水量が少ない上に都市化が急速に進み、水環境が著
しく悪化しています。特に綾瀬川は、国土交通省が毎年実施している水質調査(BOD調査)において、15年連続ワースト1という記録を残しています。ま
た、かつて江戸との舟運路として用いられ、良質な川砂が鋳物産業を支えてきた芝川も、県内水質ワースト10位内にランクされるなど、場所によっては魚の生
息も不可能なほどの汚染された川となっています。

治水・利水を優先させてきた従来の河川整備事業に加え、環境面での整備にも重点を置いて、水辺に生息する動植物や近隣住民に配慮し、うるおいや安らぎを感じられる川づくりの必要性を強く感じます。

[ 芝川・綾瀬川等浄化導水事業 ]

今回ご紹介する「芝川・綾瀬川等浄化導水事業」とは、
地下鉄・埼玉高速鉄道線のトンネル下部に直径1.2mの導水管を通し、荒川の水を芝川・綾瀬川・伝右川・毛長川に導水するというものです。荒川のキレイな
水を各河川の上流に放水することにより、水質の改善と水量の確保が図られます。導水量は4つの河川合計でおよそ毎秒3トン。小学校のプールが2分で一杯に
なる量です。

国道122号線の新荒川大橋付近で取水された荒川の水は、地下鉄・川口元郷駅からおよそ12kmの区間、地下鉄トンネルの下層を流れ、各駅舎内施設では管理システムによりモニターでの監視が行われます。それから浄化用水は浦和美園駅付近にある分水施設により綾瀬川方向と芝川方向へと分けられ、4つの川それぞれの放流口へと流れていきます。

 この導水事業は、建設コストの軽減や工期の短縮、工事による騒音など周辺環境への影響の低減を図るため、日本で初めて地下鉄と共同で整備が行われた画期
的な試みです。総事業費は約300億円。全て国費が投入され、その予算獲得には、私も国会議員時代に多少の汗をかかせていただきました。

工事の着工には河川法上の問題もありましたが、それらもクリアし、施設は平成15年度に完成しました。現在は最終試験運転中であり、今年の冬頃より通常運
転へ移行する予定となっています。皆さんも、今年の冬には、水量が増えキレイになった芝川や綾瀬川の姿をご覧いただけると思います。

[ 緑川・堅川への取り組み ]

一方で、私たちの街には、まだ他にも環境を改善したい川が残されています。芝・前川・上青木地区を流れる緑川と堅川は、水質も悪く、冬は水量も減り、また夏になると発するその悪臭に周辺住民の皆さんも悩まされていることと思います。


は国が管理する芝川に導水事業が行われるときが、長年の地域の課題であった緑川や堅川の水質改善のチャンスと考え、国の導水事業の再活用を働きかけまし
た。この取組は、現在「芝川取水施設整備事業(事業費約19億円)」として、埼玉県が国の補助を受けて、実施しています。

芝川のさいたま市境にある八丁橋下流にポンプ場を建設し、見沼用水から六ヶ村用水経由で緑川へ、さらに堅川へと導水するこの事業は、平成17年度に完成予定となっています。

[ 河川浄化のために私たちにできること ]


度失われた自然を元の姿に取り戻すには、莫大な時間と労力、そして予算が必要になります。今回導水事業が行われるこれらの河川は、私が子どもの頃は泳げる
くらいにキレイでした。しかし現在は、流域の開発に伴い都市排水路と化し、その汚濁原因は各家庭からの生活雑排水が7割を占めていると言われています。

食用油を流さない(油を凝固剤で固めてゴミとして出すなど)こと、洗剤を適正に使用すること、ゴミなどを投棄しないこと等、私たち一人ひとりが環境への意識を高めることが何より有効です。自分の住む街の川は自分達の手で守っていきたいものです。

水面に映る光、美しい川の流れが、私たちに「心の豊かさ」をもたらす源流となりますように。私も心から願って止みません。

新 藤 義 孝