第17号 わが街のDNA4 川口・鳩ヶ谷・蕨 3市合併の意義を問う!



在、川口・鳩ヶ谷・蕨の3市法定合併協議会で決定された「武南市」という名称に対し、市民から多数の意見が川口市に寄せられています。「名は体を表す」と
いう言葉があるように、名称にはその存在理由が込められていなければなりません。そこで、今号は、「名称」にまつわるお話を紹介しつつ、3市合併の問題点
とその意義について、皆様と一緒に考えて参りたいと思います。

私たちは埼玉県に住んでいます。そもそも埼玉は、古くは「さきたま」と呼ばれていました。「埼」という言葉は、「突き出た岸」あるいは「山の端」という意
味で、いわば「小高い丘」をさしています。一方、「玉」には、「美しいもの、優れたもの」という意味があり、「埼玉」とは、「丘のようななだらかな起伏の
続く美しく、優れた所」という意味を持っているのです。

国名や地名には必ず歴史的または地勢的な意味があり、中には時の支配者や政治に翻弄されたケースもあります。
例えば、我が国の最南端に位置する沖縄県は、かつて「琉球王国」という琉球民族による独立国であり、言葉も文化も日本本土とはまったく違うものでした。地
理的にちょうど鹿児島県と台湾の中間に位置することから、歴史的にもかつての薩摩藩と清(今の中国)の双方から常に干渉を受け、二面外交を強いられてきた
のです。そして、明治維新後、琉球は日本に取り込まれ「沖縄」となりました。沖縄という名前の由来は諸説ありますが、「海上の島が縄のように連なってい
る」という理由で、明治政府が名付けたといわれています。


かし、琉球の歴史は、太平洋戦争の敗戦後、アメリカ軍の占領中も沖縄の学校で教えられておりました。ところが、1972年の本土復帰に伴い、文部省の教科
書検定による日本本土の教科書が使用されることになり、沖縄県民にとって文化的財産ともいえる琉球の歴史は、教育の場から姿を消してしまったのです。

私は外務大臣政務官を拝命していた当時、沖縄問題を担当の一つとしておりました。在日米軍の75%が駐留する基地問題等、日米安保で揺れる沖縄県民の心情
を思い、沖縄の痛みを日本の痛みとするべく、この問題に取り組みました。県民の心の奥底に流れる民族の誇りや文化・歴史を尊重し、琉球の文化的独立を地元
の方々に提案したこともありました。

さて、この度の川口・鳩ヶ谷・蕨の3市合併に目を向けた時、3市法定合併協議会が決定した「武南市」という新名称は、どのような由来や理由をもとに選択さ
れたのでしょうか。市の名称は市民の意識が統合されたシンボルです。私たちは、その重大さをもう一度認識する必要があると思います。さらに、「今、なぜ合
併なのか?」という意義や必要性について、しっかりと考えていくべきです。現状では議員の報酬格差の是正や議員任期の特例など、合併に向けた手続き論が議
論の中心になっており、非常に残念に思われてなりません。

そもそも市町村の合併は、地域だけの問題ではないのです。現在、我が国は構造改革を進めておりますが、その中で、私が最も重要と位置付けて参りましたの
が、「小さな政府」と「地方分権」の確立です。国家は外交、防衛・安全保障、マクロ経済、そして憲法や教育、福祉といった、国の基本に関わる機能に専念し
「小さな政府」とするべきです。

一方、地方には国の権限・財源を移し、受け皿となる自治体を整備しなければなりません。その為に市町村合併が進められており、「地方分権」実現の大前提と
なっています。現在の大小約3,100ある地方自治体は、数百人の村から数十万・数百万人に及ぶ大都市まであり、国の仕事や事務を一律に請け負える状態で
ないことは、皆様も容易に想像できると思います。しかも、小さな規模にも関わらず施設や組織はある程度設けなければならず、そこに人や予算のムダや不合理
が発生しているのです。

このように、市町村合併は、地域の問題であるとともに、国政運営上の重要課題になっています。但し、合併が数合わせに終わっては意味がありません。地域の
歴史や文化・伝統を十分に加味した上で、しっかりとした合併後の戦略を持つ都市を創ることが、その地域の未来を拓くのです。

私は総務大臣政務官を拝命していた当時、政令指定都市の人口要件を従来の100万人から70万人に緩和する法律にたずさわりました。県並みの権限と財源を
持つ政令指定都市を増やしたいと考えたからです。そして、その時模索されていたこの県南地域の合併は、現在の3市に戸田市を加えた4市合併であり、その規
模は概ね70万人になっていたのです。残念ながら、戸田市の離脱により政令市としての合併は立ち消えになってしまったのですが・・・

どうか、この名称問題を契機に、川口、鳩ヶ谷、蕨の行政および市議会は3市合併の意義をもう一度見直し、市民の意見にもしっかりと耳を傾け、この合併という国策に取り組んでいただきたいと切に願うものです。

新 藤 義 孝