第5・6号 <シリーズ 年金改革 ?1? > 「年金改革」に向けての私の視点

私たち国民の最大の関心事である年金とその改革。『週刊新藤』では新シリーズとして年金改革を取り上げます。日常生活の視点に立ち、真正面から取り組むこ
とによって、皆さまのより良き人生設計のお役に立ちたいと願っているからです。そこで、第1回の今週は、年金改革を行うにあたり、絶対に見落としてはいけ
ない重要な事柄について考えてみたいと思います。

少子高齢化が世界一速いスピードで進む日本は、約半世紀後の2050年には65歳以上の高齢人口が35%を超えることが予想され、「私たちの老後の生活は大丈夫なのか?」という不安が、国民ひとり一人の心に大きな影を落としてきています。

実際に「基礎年金(国民年金)」と「厚生年金」の資金運用の実績を見てみると、2002年度における累積損益額が、マイナス6兆717億円にものぼる現状
があります。このまま進んでいけば、20年以内に確実に国庫の積立金は底をつき、国家としての社会保障体制が崩壊するといっても過言ではありません。

このたび、小泉内閣が「抜本的な年金改革を行う」として打ち出した政府案は、「負担」と「給付」のバランスを考慮した、次の3つのポイントから成り立っています。

① 厚生年金保険料を現行の13.58%から、14年かけて18.3%に固定する。
② 標準的な年金世帯における厚生年金給付額を順次引き下げ、最終的には手取り年収の所得代替率を約50%の水準とする。
③ 「基礎年金(国民年金)」の財源に占める国庫負担の割合を、段階的に3分の1から2分の1まで引き上げる。

しかし、数年来、出生率が約1.3人という少子化が進む今日、今生まれた子供たちが大人になる20年後には、今より少ない生産人口で、確実に増えている将
来の高齢者世代(団塊の世代やその後の私たちの世代のことです)を負担しなければなりません。この政府案では少子高齢化に対する将来への見通しが甘すぎる
と言わざるを得ません。また③の国庫負担を2分の1に引き上げることによって約2兆7千億円の新たな財源が必要になりますが、その具体的な財源確保につい
て明確な方策を示していない不備もあり、抜本的な改革とはほぼ遠い内容となっています。

一方、野党の民主党が提出した案を見ても、国民年金や厚生年金等の一元化を目指すという方向性は評価できますが、負担額と給付額の具体的な数字を明らかす
ることができず、具体性に欠けた内容となっています。しかも、国会において審議拒否を行うなど、年金改革を政治的な綱引きの道具に利用していることは、許
しがたい行為といえましょう。

ここで、私が最も憂慮していることは、年金に関わる問題で政治に対する国民の信頼が失墜し、国民の抱く将来への不安をさらに増幅しているということです。
その理由として、
① 年金による保養施設や福祉施設の無計画な建設とずさんな経営。
② 社会保険庁職員による基金のお手盛り的運用(人件費や車輌購入等への流用)。
③ 国庫負担が7割という「国会議員互助年金」の存在(このことに関しては即時廃止を訴えていきたいと思っています)。
④ 現職3閣僚による年金保険料未納問題の発覚(国民の模範たる者のうっかりミスは言い訳になりません。猛省を促したいと思います)。

私はこれらの問題と矛盾を解決し、国民の政治への信頼を回復していくことが年金改革の第一歩であり、同時に国家が国民の生活を守るという生活安全保障の責務を全うしていく上で、まず果たさなければならないことであると考えているのです。

新 藤 義 孝

  ?(続く)?