第8号 <シリーズ 年金改革 -3-> 私が描く「年金改革」のビジョン!

私は「国会議員互助年金の廃止」、「年金の無駄遣いをやめる」等、『週刊新藤』を通して政策を主張してきました。しかし、小沢一郎氏の民主党代表就任撤回
など、未だ国会のドタバタぶりは目を覆うばかりです。年金制度改革はどうしてもやり遂げなくてはならない国家の最重要課題です。そこで今週は、私の描く
20年先を見通した「年金改革」の具体的ビジョンをお伝えしたいと思います。


大切なことは年金改革の論議を深めること。責任を持って次の世代に引き継ぐために

日本では15歳から64歳までが生産人口と区分され、65歳からは高齢人口と呼ばれています。しかし、すでに世界一の長寿国であり、これからますます平均
寿命が延びるであろうわが国において、65歳は本当に生産活動を止めた高齢者なのでしょうか?私はその高齢者という区分を5年間スライドすることはできな
いのかと考えています。つまり、定年後の60歳ぐらいから70歳までを第二期生産人口と位置づけ、働ける方や働きたい方にはその場所を提供してはどうかと
いうことです。

もちろん、若い頃のようにという訳にはいきません。働く時間と収入は現役の頃の半分以下でもよいと思います。高齢者の持つ豊かな経験や知識、技能を社会の
財産として活かし、単純労働や一時的なものではなく、誇りを持ってじっくりと取り組むことのできる職場の提供ができれば、高齢者の方も第二期生産者とし
て、健康の増進や生きがいの創造のため、働けるうちは働いて、堂々と自らの力で収入を確保できます。このことにより公的年金の給付額は減額できることにな
り、あわせて現役世代の年金保険料も下げることができます。

また、「生産人口の減少によって、年金制度そのものは残っても自分が年寄りになる頃には年金をもらえないのではないか」という声をよく耳にします。このま
までは20年後に深刻な状態が予想される現行の年金制度を考えれば、誰しも不安を抱くことでしょう。では、どうしたらよいのか?そのためには「世代間扶養
型」の現行制度を良くしていくという『改善』ではなく、自分が払ったものを自分で受け取るという「自己責任・自助努力型」の新しい制度に切り替えていく
『改革』が、必要なのではないでしょうか。例えばアメリカで制度化された「401Kプラン」(注1)をモデルとした「確定拠出型年金」が、すでに日本の企
業でも始まっているのです。これは、現役時代に自分で納めた年金掛け金を会社に預け運用してもらい、定年後の自分が受け取ることのできる個人年金といわれ
る制度です。


輝く笑顔が私の元気の源。この子達の20年後のために…

以上述べたように、第2期生産人口の設定による再雇用制度と個人年金の充実によって、定年後の生活は「第二期生産者としての給料+個人年金+65歳からの
公的年金」という3つの組み合わせで過ごせることになります。20年後の日本社会のビジョンは、「豊かで、誇りと張りのある高齢社会」としてはどうかと私
は考えているのです。

さらに私的な構想ですが、公的年金や老人医療費などといった助成を必要としない、高額所得の高齢者に対する社会保障の一時的放棄制度を導入できないかと考
えています。分かり易く言えば、「自分が働いて充分な所得があるうちは年金支給や老人保健の適用を放棄する。しかし、その代わりに毎年の確定申告で、放棄
した社会保障額を所得税から控除できる」という制度です。もちろんご自分の都合により権利はいつでも回復できます。しかし、このことにより全体の年金支払
額が確実に減少します。年金財政の向上により本当に年金を必要とする人に確実に給付がなされるという、弱者に優しい社会・国家にもなっていくのです。


こで、読者の皆さまの中には、「そんなことが本当にできるのか?」と思われる人もいらっしゃるかと思います。しかし、テレビのリモコンや携帯電話を操作す
る程度でコンピューターが使える時代が、すぐそこまで来ています。「自分にはどのくらいの収入や資産があり、また税金や年金保険料、医療保険料をいくら支
払っているのか」、「自分はこの保障については国からの還元を受けないので、この納税義務を免除してもらおう」等々、国民ひとり一人が自分の所得と、それ
に対する国民負担費(税金+社会保障費)を、パソコンによって自己管理し、インターネット等を活用して政府や地方自治体に自己申告していけばよいのです。

要は、このような骨太の改革に真剣に取り組むかどうか、ということだと思います。つまり、「各種年金の一元化」を早急にはかりながら、それに加え年金、医
療、福祉といった社会保障制度と、それに関わる税制を総合的に連携させた新しい国民負担制度を創設し、「人生の行程表」を国民の皆さまに示すことが政治の
責任であり、真の改革ではないでしょうか。払うものと受け取るもの、放棄するものと控除されるものを、誰もが簡単に自己管理・自己申告していける制度を構
築することこそが、信頼と納得の年金改革になっていくと私は信じています。

世界一の長寿社会を持つ国として、私たち日本人は世界に向けて、オリジナルな「日本方式」を発表すべきではないでしょうか。今後も皆さんからのいろいろな
ご意見・ご提言を頂戴し、国民生活を根本から見直す運動を市民レベルでしっかりとやっていきたいと思います。

新 藤 義 孝

(注1.401Kプラン)

米国の確定拠出型企業年金プランのこと。米国の「内国歳入法
401条K項」による税優遇措置(1978年成立)を利用しているところから、この名がある。資産運用は企業が示す各種プランの中から従業員が自分の責任
で選び運用し、積み立てられた資産は加入者の個人勘定となる。
日本ではこれをモデルとして、2001年に「確定拠出年金法」が施行された。