第2号 スキンシップ 〜 子供たちの未来のために

 3月から4月にかけては、「卒業式」と「入学式」のシーズン。新しい世界へと旅立っていく青少年の姿を見ると、「おめでとう。これからも自分の力を信じて、がんばれよ!」と思わず、我を忘れて声をかけてしまいます。

 今年、青少年の人たちの間で定番となった卒業ソングは、街頭でのミニコンサートから頭角を現わし、一昨年、デビューを果した森山直太朗が歌う『サクラ』
だそうです。私の学生時代といえば、武田鉄也の『贈る言葉』でした。『仰げば尊し』や柏原芳恵の『春なのに』等々、メロディーを聞いただけで、胸がキュッ
となるような思い出をお持ちの方も、たくさんいることでしょう。

 先日、青少年に関するある統計資料を見た時、思わず自分の目を疑い、しばらく声が出ませんでした。

 皆さん、日本で大体どのくらいの数の子どもたちが、両親の虐待によって亡くなっているかご存知ですか?なんと3.5日に1人の割合で、尊い小さな「いの
ち」が失われているのです。死には至らないまでも、児童相談所に届け出があっただけで、約2万4千件にものぼっています。(この数字は氷山の一角でしょ
う)

 さらには、10代、20代で自殺をした青少年が年間3,500名以上にのぼり、自殺願望を持つ青少年まで広げれば、その10倍にのぼるだろうと予測され
ています。また、特筆すべきは、インターネット上で知り合った複数の自殺志願者が、一緒に自殺をするという「ネット心中」が、2003年から若者の問で急
増しています。

 
目に入れても痛くないはずの我が子を虐待してしまう親たち。また最も大切なものである自分の「いのち」さえも、自らの手で捨ててしまう若者たち。これらの
現象が同じ時代に存在する理由は何かと自らに問いかけた時、私は、その人自身の幼年期における両親からの愛情不足、しいて言えば「スキンシップの欠如」が
原因であるといっても過言ではないと思っています。

 乳幼児期に両親が十分に抱っこし、時にはぎゅっと抱きしめてあげる。また成長したら一緒に鬼ごっこや相撲、プロレスもする、そうしたスキンシップによっ
て、人間本来の持つ優しさや愛情といったものが豊かに育まれていくことが、児童心理学のみならず、大脳生理学の分野でも証明されているのです。

 私が副園長を務める幼稚園でも、私の顔を見ただけで園児たちは私に飛びつき、しがみつき、一緒に相撲でもとるものなら男女間わず大喜びです。

 現代社会はどんどん複雑に多様化していきます。しかし、子供を抱きしめた気持ち、親から抱きしめられた心地良さを各々が心の中に留めておけたなら、人は
どんなにやさしく豊かでいられることでしょう。新藤義孝はそんな想いを胸に教育問題に取り組んでいきたいと思っています。

新 藤 義 孝